勤怠管理がずさんな会社の特徴とは?リスクと改善の手順について

勤怠管理

タイムカードも出勤簿もあり、毎月の集計もしているのに、労働基準監督署の調査で「勤怠管理がずさん」と指摘される会社があります。

勤怠管理がずさんな状態とは、記録そのものがないことではなく、記録はあっても実際の労働時間を正しく反映していない状態を指し、多くの会社では長年の慣習として気づかれないまま続いています。

残業の15分単位の切り捨てや、始業前の朝礼を労働時間に入れない運用など、昔からのやり方が、現在の基準では未払い賃金とみなされるケースも少なくありません。

この記事では、勤怠管理がずさんな会社の特徴とチェックリスト、ずさんになりやすい記録の扱い、リスク、原因、改善の手順までを解説します。

勤怠管理がずさんな会社の特徴とは?

勤怠管理がずさんな会社の特徴は、記録はあるものの実際の労働時間を反映していないことで、所定時刻の一律記入、端数の切り捨て、打刻の前後の労働の放置、修正の経緯が残らないといった状態が典型です。

形式上の記録が整っていても、実態とずれていれば、労働時間を適正に把握しているとはいえません。

ずさんな勤怠管理のチェックリスト

以下の項目に1つでも当てはまる場合は、勤怠管理がずさんな状態になっているおそれがあります。

チェック項目 問題になる理由
出勤簿に毎日同じ始業・終業時刻が並んでいる 実際の時刻ではなく所定の時刻を書いている可能性が高い
残業を15分や30分単位で切り捨てている 切り捨てた時間の賃金が未払いになる
始業前の朝礼や着替えの時間を労働時間に入れていない 会社の指示による準備は労働時間にあたる
タイムカードを押してから仕事を続ける従業員がいる 打刻の時刻と実際の終業時刻がずれている
事前申請のない残業は記録していない 黙認していれば労働時間として扱われる
休憩が取れなかった日も一律に1時間を差し引いている 取れなかった休憩の時間分が未払いになる
打刻の修正を誰がいつ行ったか分からない 記録の正しさを後から説明できない
管理職の労働時間を記録していない 管理監督者も労働時間の状況の把握の対象になる

これらはいずれも、多くの会社で慣習として続いているものですが、労働基準監督署の調査や未払い残業代の請求では、問題として指摘されやすい項目です。

勤怠管理が「ない」状態との違い

タイムカードや出勤簿を置かず、労働時間をまったく記録していない状態は、勤怠管理が「ない」状態です。

一方、勤怠管理が「ずさん」な状態は、記録はあるものの、その記録が実態を反映していない状態を指します。

記録があるために会社側は管理できているつもりになりやすく、問題に気づくのが遅れる点で、ずさんな状態の方が発見しにくいといえます。

記録がまったくない場合のリスクについては、勤怠管理がない会社のリスクを解説した記事で詳しく紹介しています。

このように、勤怠管理がずさんな会社の特徴は、記録はあるものの実際の労働時間を反映していないことで、所定時刻の一律記入、端数の切り捨て、打刻の前後の労働の放置、修正の経緯が残らないといった状態が典型です。

次は、勤怠管理がずさんになりやすい具体的な記録の扱いを確認します。

勤怠管理がずさんになりやすい記録の扱い

勤怠管理がずさんになりやすいのは、残業の端数の切り捨て、始業前の準備や朝礼の扱い、打刻の前後の労働、申請のない残業、休憩の一律控除の5つで、いずれも実際の労働時間と記録のずれを生みます。

どれも会社に悪意がなくても起こりやすく、長く続けるほど未払いの金額が積み上がっていきます。

15分・30分単位の切り捨て

労働時間は1分単位で計算するのが原則で、1日ごとに残業を15分単位や30分単位で切り捨てることは、賃金の全額払いの原則に反します。

たとえば、毎日10分の残業を15分未満として切り捨てていれば、その10分間の賃金が支払われていないことになります。

例外として認められているのは、1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働のそれぞれの合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理だけです(昭和63年3月14日基発150号)。

1日ごとに切り捨てる処理は、この例外にはあたりません。

従業員に有利になる切り上げは問題ありませんが、切り捨ての方向での日ごとの端数処理は、すぐに見直す必要があります。

始業前の準備・着替え・朝礼

会社が義務付けている始業前の着替えや準備、朝礼の時間は、始業時刻より前であっても労働時間にあたります。

最高裁判所の判例(平成12年3月9日・三菱重工業長崎造船所事件)では、会社から作業服や保護具の着用を義務付けられ、決められた場所で行うよう指示されていた着替えの時間は、労働時間にあたると判断されました。

タイムカードの打刻を始業時刻の直前に行う運用にしている場合、それより前の朝礼や準備の時間が記録から漏れていないかを確認する必要があります。

打刻後や打刻前の労働

終業時刻にタイムカードを押してから片付けや残務を続けたり、出勤してすぐには打刻せずに仕事を始めたりする従業員がいる場合、記録と実際の労働時間がずれます。

会社がこうした状態を知りながら放置していれば、打刻の前後の時間も労働時間として扱われる可能性があります。

打刻は仕事を始める直前と、仕事を終えた直後に行うことをルールとして周知し、打刻後に職場に残っている従業員がいないかを管理者が確認することが大切です。

残業の事前申請制と申請のない残業

残業を事前申請制にしている会社は多いですが、申請のない残業を記録しない運用は問題になります。

申請がなくても、会社が残業している事実を知りながら黙認していた場合や、残業しなければ終わらない量の業務を指示していた場合は、黙示の指示による労働時間と判断されることがあります。

事前申請制を採用する場合でも、実際の打刻の時刻は記録として残し、申請と打刻にずれがあれば理由を確認する運用にしておく必要があります。

休憩時間の一律控除

就業規則で決めた休憩時間を、実際に休憩を取ったかどうかにかかわらず一律に差し引く運用も、ずさんな勤怠管理の典型です。

忙しくて休憩が取れなかった日も1時間を差し引いていれば、その時間分の賃金が支払われていないことになります。

休憩が取れなかった日は従業員が申告し、記録を修正する手順を決めておくか、休憩の開始と終了も打刻で記録する方法に切り替えることが必要です。

このように、勤怠管理がずさんになりやすいのは、残業の端数の切り捨て、始業前の準備や朝礼の扱い、打刻の前後の労働、申請のない残業、休憩の一律控除の5つで、いずれも実際の労働時間と記録のずれを生みます。

次は、勤怠管理がずさんな会社のリスクを確認します。

勤怠管理がずさんな会社のリスク

勤怠管理がずさんな会社のリスクは、未払い賃金の発生、労働基準監督署の是正勧告、長時間労働の見落としによる安全配慮義務違反に加えて、従業員の不正打刻があっても懲戒処分が認められにくくなることです。

記録があることで安心していても、その記録が実態とずれていれば、会社を守る証拠にはならず、かえって会社に不利な材料になることもあります。

未払い賃金の発生

端数の切り捨てや始業前の準備時間の除外は、1日あたりでは数分から数十分でも、従業員の人数と期間を掛け合わせると大きな金額になります。

たとえば、1日15分の労働時間が記録から漏れていれば、月20日で5時間、3年間で180時間分の賃金が未払いになります。

賃金請求権の時効は3年に延びており、同じ運用をしている従業員全員から請求される可能性があります。

厚生労働省の公表によると、令和7年に全国の労働基準監督署が取り扱った賃金不払の事案は22,605件、金額は約128億5,782万円にのぼります。

労働基準監督署の是正勧告

労働基準監督署の調査では、タイムカードや出勤簿の記録と、パソコンの使用記録や入退室の記録などを照らし合わせて、記録と実態のずれが確認されることがあります。

ずれが見つかった場合は、労働時間の適正な把握や未払い賃金の支払いについて是正勧告や指導を受け、過去にさかのぼって調査と精算を求められることもあります。

長時間労働の見落としと安全配慮義務

記録上の労働時間が実際より短くなっていると、長時間労働になっている従業員を会社が把握できません。

時間外・休日労働が月80時間を超える従業員には医師の面接指導の対象となる場合がありますが、記録がずれていれば、その対象者を見落とすことになります。

健康障害が起きた場合、会社は安全配慮義務を果たしていなかったとして、損害賠償を求められるおそれがあります。

従業員の不正打刻を懲戒できない

勤怠管理がずさんな会社では、従業員がタイムカードの不正打刻をしても、懲戒処分が認められにくくなります。

打刻しない従業員を指導していない、長時間の離席を放置している、不正な打刻に気づきながら注意していなかったといった場合、会社の管理の不備も原因の1つと判断され、懲戒解雇などの重い処分は無効とされやすくなります。

従業員の不正に厳しく対応するためには、会社自身が勤怠のルールを定め、日頃から守らせていることが前提になります。

このように、勤怠管理がずさんな会社のリスクは、未払い賃金の発生、労働基準監督署の是正勧告、長時間労働の見落としによる安全配慮義務違反に加えて、従業員の不正打刻があっても懲戒処分が認められにくくなることです。

次は、勤怠管理がずさんになる原因を確認します。

勤怠管理がずさんになる原因

勤怠管理がずさんになる原因は、担当者の注意不足ではなく、集計を1人に任せきりにしている、紙や自己申告で管理している、ルールが古いまま、管理職が勤怠を確認していないといった、会社の仕組みの問題にあります。

原因を担当者個人の問題として扱うと、担当者が替わっても同じ状態が繰り返されます。

担当者1人に任せきりになっている

中小企業では、勤怠の集計を総務や経理の担当者が1人で兼務していることが多くあります。

集計のやり方が担当者の判断に任され、誰も確認していない状態では、法令に合わない処理が続いていても気づく機会がありません。

紙や自己申告で管理している

紙の出勤簿やエクセルに従業員が時刻を書き込む方法では、実際の時刻ではなく所定の時刻を書く習慣がつきやすくなります。

また、後から誰でも書き換えられるため、修正の経緯が残らず、記録の正しさを確認する手段がありません。

ルールが古い・あいまい

15分単位の切り捨てや休憩の一律控除は、以前から続いている社内のルールとして、そのまま引き継がれていることがほとんどです。

打刻のタイミングや残業の申請方法、休憩が取れなかった場合の扱いが決まっていないと、従業員ごとに運用がばらばらになり、記録のずれが生まれます。

管理職が勤怠を確認していない

部下の勤怠を確認する立場の管理職が、打刻の漏れや、打刻後に残っている部下がいることを把握していないケースも多くあります。

現場の管理職が勤怠を確認しなければ、集計担当者は記録が実態と合っているかを判断できません。

このように、勤怠管理がずさんになる原因は、集計の任せきり、紙や自己申告での管理、古くあいまいなルール、管理職が勤怠を確認していないといった、会社の仕組みの問題にあります。

次は、労働基準監督署に勤怠管理がずさんと指摘された場合の対応を確認します。

労働基準監督署に勤怠管理がずさんと指摘された場合の対応

労働基準監督署に勤怠管理がずさんと指摘された場合は、是正勧告書と指導票の内容を確認し、指摘された期間の労働時間を調査して未払い分を精算したうえで、期日までに是正報告書を提出する流れで対応します。

指摘を受けた段階で誠実に対応すれば、多くの場合は行政指導の範囲で解決します。

是正勧告書と指導票の内容を確認する

調査で法令違反が見つかった場合は是正勧告書が、法令違反ではないものの改善が望ましい点については指導票が交付されます。

それぞれに、どの条文に違反しているか、どのような改善を求められているか、いつまでに報告すればよいかが記載されているため、まずは内容を正確に把握します。

労働時間の把握について指摘を受けた場合は、客観的な記録の方法を導入することや、記録と実態のずれを調査することを求められるのが一般的です。

過去の労働時間を調査して精算する

未払い賃金について指摘を受けた場合は、指摘された期間について、実際の労働時間を調査する必要があります。

パソコンの起動・終了の記録、入退室の記録、業務メールの送信時刻、従業員からの聞き取りなどをもとに、記録から漏れていた労働時間を確認し、未払いとなっていた割増賃金を計算して支払います。

調査の範囲や計算方法に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士に相談しながら進めると確実です。

是正報告書を提出する

是正の内容と、未払い賃金を支払った場合はその金額や対象者を記載した是正報告書を、期日までに労働基準監督署に提出します。

あわせて、同じ問題が再発しないように、勤怠のルールや記録の方法をどのように見直したかを説明できるようにしておくことが大切です。

是正勧告に従わずに違反を続けた場合や、悪質と判断された場合は、書類送検される可能性があります。

このように、労働基準監督署に勤怠管理がずさんと指摘された場合は、是正勧告書と指導票の確認、過去の労働時間の調査と精算、是正報告書の提出という流れで対応します。

次は、ずさんな勤怠管理を改善する手順を確認します。

ずさんな勤怠管理を改善する手順

ずさんな勤怠管理を改善するには、現在の記録と実態のずれを把握し、勤怠のルールを見直して周知したうえで、客観的な記録の方法に切り替え、定期的に確認する仕組みをつくるという順番で進めることが効果的です。

労働基準監督署の指摘や従業員からの請求を受ける前に自主的に改善しておけば、会社の負担は小さく済みます。

現状の記録と実態のずれを把握する

まずは、この記事のチェックリストをもとに、自社の記録のどこに問題があるかを洗い出します。

タイムカードの時刻とパソコンの使用記録や入退室の記録を数日分比べてみると、始業前や終業後にどれくらいの時間が記録から漏れているかが分かります。

勤怠のルールを見直して周知する

次に、以下のようなルールを見直し、文書にして従業員と管理職に周知します。

  • 打刻は仕事を始める直前と、仕事を終えた直後に行う
  • 始業前の着替えや朝礼がある場合は、その前に打刻する
  • 労働時間は1分単位で記録し、日ごとの切り捨ては行わない
  • 申請のない残業があった場合は、打刻の記録を残したうえで理由を確認する
  • 休憩が取れなかった日は申告し、記録を修正する
  • 打刻の修正は、決められた手順で申請と承認を行う

ルールを変えた結果、記録上の労働時間が増えることもありますが、それは実態が正しく記録されるようになったということです。

客観的な記録の方法に切り替える

紙の出勤簿やエクセルへの手入力は、所定の時刻を書く習慣や後からの書き換えを防げないため、打刻した時刻がそのまま記録される方法に切り替えます。

打刻の修正が申請と承認の手順で行われ、修正の記録が残る勤怠管理システムを使えば、記録の正しさを後から説明できるようになります。

定期的に確認する仕組みをつくる

ルールと記録の方法を整えても、確認する仕組みがなければ、時間とともに元の運用に戻ってしまいます。

管理職が週に1回は部下の打刻漏れや長時間労働を確認する、集計担当者が月に1回は申請と打刻のずれを確認するなど、確認の担当とタイミングを決めておきます。

勤怠管理システムのアラート機能を使えば、確認が必要な従業員を自動で知らせてくれるため、確認の手間を大きく減らせます。

このように、ずさんな勤怠管理を改善するには、記録と実態のずれの把握、ルールの見直しと周知、客観的な記録の方法への切り替え、定期的な確認の仕組みづくりという順番で進めることが効果的です。

次は、ずさんな勤怠管理の改善に使える勤怠クラウドを紹介します。

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