勤怠管理の義務とは?記録すべき項目と保存期間を一覧で解説

勤怠管理

勤怠管理が会社の義務だということは知っていても、具体的に何を記録し、どの書類を何年保存すればよいのかまで正確に把握している担当者は多くありません。

勤怠管理の義務は、1つの法律にまとめて書かれているわけではなく、労働基準法、労働安全衛生法、施行規則、厚生労働省のガイドラインに分かれて定められているため、全体像がつかみにくくなっています。

さらに2019年以降、義務の内容は段階的に強化されており、以前の知識のまま運用していると、気づかないうちに対応が漏れていることがあります。

この記事では、勤怠管理の義務の根拠、記録すべき項目、書類ごとの保存期間、対象になる従業員、違反した場合の罰則までを一覧で解説します。

勤怠管理の義務とは?

勤怠管理の義務とは、会社が従業員の労働時間を客観的な方法で把握し、決められた項目を記録して一定期間保存する義務のことで、その記録をもとに、労働時間の上限、休憩、休日、割増賃金、有給休暇5日取得のルールを守ることが求められます。

勤怠管理は、給与を正しく計算するための社内の事務作業であると同時に、法律で会社に課された義務でもあります。

記録がなければ、労働時間の上限や割増賃金のルールを守れているかどうかを、会社自身が確認することもできません。

勤怠管理の義務の根拠となる法律

勤怠管理に関する主な義務と、その根拠は以下の通りです。

義務の内容 根拠
労働時間の状況を客観的な方法で把握する 労働安全衛生法第66条の8の3
始業・終業時刻を確認し、記録する 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
賃金台帳に労働時間数などを記入する 労働基準法第108条、施行規則第54条
出勤簿などの記録を保存する 労働基準法第109条
年次有給休暇管理簿を作成・保存する 労働基準法施行規則第24条の7
法定労働時間と時間外労働の上限を守る 労働基準法第32条・第36条
休憩・休日を与える 労働基準法第34条・第35条
時間外・休日・深夜の割増賃金を支払う 労働基準法第37条
年10日以上付与される従業員に年5日の有給休暇を取得させる 労働基準法第39条第7項

表の上の4つが、労働時間を把握して記録する義務で、残りはその記録をもとに守るべき義務です。

2019年以降に強化された義務の時系列

働き方改革関連法の施行により、勤怠管理に関する義務は、以下のように段階的に強化されてきました。

時期 主な内容
2019年4月 労働時間の状況の客観的な把握の義務化、年5日の有給休暇取得の義務化と管理簿の作成、大企業への時間外労働の上限規制の適用
2020年4月 中小企業への時間外労働の上限規制の適用、賃金請求権の時効と記録の保存期間を5年に延長(当分の間は3年)
2023年4月 中小企業にも月60時間を超える時間外労働の割増率50%以上を適用
2024年4月 建設業、自動車運転の業務、医師への時間外労働の上限規制の適用

2019年より前から勤怠管理の仕組みを変えていない会社は、客観的な記録の方法や有給休暇管理簿、上限規制への対応が漏れていないかを確認する必要があります。

このように、勤怠管理の義務とは、労働時間を客観的に把握し、決められた項目を記録して一定期間保存する義務のことで、その記録をもとに、労働時間の上限、休憩、休日、割増賃金、有給休暇5日取得のルールを守ることが求められます。

次は、勤怠管理で具体的に記録すべき項目を確認します。

勤怠管理で記録すべき項目

勤怠管理で記録すべき項目は、ガイドラインが求める日ごとの始業・終業時刻、賃金台帳に記入する労働日数・労働時間数・時間外や休日・深夜の労働時間数、年次有給休暇管理簿に記載する時季・日数・基準日の3つに分けて整理できます。

出勤したかどうかだけを記録しても、法律が求める項目を満たすことはできません。

ガイドラインが求める始業・終業時刻の記録

厚生労働省のガイドラインでは、会社は従業員の労働日ごとに、始業時刻と終業時刻を確認し、記録することとされています。

記録するのは、就業規則で決めた所定の時刻ではなく、実際に働き始めた時刻と働き終えた時刻です。

休憩時間を差し引いた実際の労働時間を計算するために、休憩の時間もあわせて把握しておく必要があります。

賃金台帳に記入する労働時間数

労働基準法施行規則第54条では、賃金台帳に記入すべき事項として、以下の項目が定められています。

  • 氏名、性別
  • 賃金の計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数
  • 基本給、手当などの賃金の種類ごとの金額
  • 賃金の一部を控除した場合はその金額

時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数を分けて記入する必要があるため、勤怠の記録も、これらを区分して集計できる形で残しておく必要があります。

年次有給休暇管理簿の記載事項

年次有給休暇管理簿には、従業員ごとに以下の3つを記載する必要があります。

記載事項 内容
時季 有給休暇を取得した日付
日数 取得した日数
基準日 有給休暇を付与した日

管理簿は、有給休暇を与えた期間中と、その期間が満了した後5年間(当分の間は3年間)保存しなければなりません。

年次有給休暇管理簿の作成・保存そのものには罰則がありませんが、作成していなければ、年5日の取得義務を守れているかを確認できないため、実質的には欠かせない書類です。

このように、勤怠管理で記録すべき項目は、日ごとの始業・終業時刻、賃金台帳に記入する労働日数・労働時間数・時間外や休日・深夜の労働時間数、年次有給休暇管理簿に記載する時季・日数・基準日の3つに分けて整理できます。

次は、勤怠管理の記録の保存義務と保存期間を確認します。

勤怠管理の記録の保存義務と保存期間

勤怠管理の記録の保存期間は書類によって異なり、出勤簿や賃金台帳などの労働基準法上の書類は5年間(当分の間は3年間)、労働安全衛生法上の労働時間の状況の記録は3年間で、起算日も書類ごとに定められています。

保存期間を過ぎる前に記録を捨ててしまうと、それだけで保存義務の違反になるため、書類ごとの期間と起算日を把握しておく必要があります。

書類ごとの保存期間と起算日

勤怠管理に関わる主な書類の保存期間と起算日は、以下の通りです。

書類 保存期間 起算日
出勤簿・タイムカードなど労働時間の記録 5年間(当分の間は3年間) 最後の記入日
賃金台帳 5年間(当分の間は3年間) 最後の記入日
労働者名簿 5年間(当分の間は3年間) 労働者の退職または死亡の日
年次有給休暇管理簿 5年間(当分の間は3年間) 有給休暇を与えた期間の満了日
労働時間の状況の記録(労働安全衛生法) 3年間 記録を作成した日

出勤簿や賃金台帳は、最後の記入日よりも賃金の支払日の方が遅い場合は、支払日から保存期間を数えます。

「当分の間は3年間」は経過措置であり、いつまで続くかは定められていないため、5年間保存できる体制を整えておくと安心です。

労働時間の状況の記録と出勤簿の保存期間の違い

労働安全衛生法の労働時間の状況の記録は、長時間労働の従業員に医師の面接指導を行うための記録で、保存期間は3年間です。

一方、労働基準法の出勤簿やタイムカードは、賃金の計算の根拠となる記録で、保存期間は5年間(当分の間は3年間)です。

実務上は同じ勤怠の記録が両方の役割を果たすため、長い方の5年間を基準に保存しておけば、両方の義務を満たせます。

紙のタイムカードで管理している場合は、5年分の保管場所も必要になるため、データで保存できる方法の方が管理の負担は小さくなります。

このように、勤怠管理の記録の保存期間は書類によって異なり、労働基準法上の書類は5年間(当分の間は3年間)、労働安全衛生法上の労働時間の状況の記録は3年間で、起算日も書類ごとに定められています。

次は、勤怠管理の義務の対象になる従業員を確認します。

勤怠管理の義務の対象になる従業員

勤怠管理の義務は、正社員だけでなくパートやアルバイトにも適用され、管理監督者や裁量労働制の従業員も労働時間の状況の把握の対象に含まれますが、高度プロフェッショナル制度の適用者だけは対象外とされています。

雇用形態や働き方によって一部のルールの適用は変わりますが、労働時間をまったく把握しなくてよい従業員はほとんどいません。

正社員・パート・アルバイト

正社員はもちろん、パートやアルバイトも、労働基準法が適用される労働者として勤怠管理の対象になります。

短時間勤務であっても、労働時間の記録、休憩、割増賃金、有給休暇のルールはすべて適用されます。

管理監督者

労働基準法上の管理監督者には、労働時間・休憩・休日の規定が適用されないため、時間外労働や休日労働の割増賃金は必要ありません。

しかし、深夜労働の割増賃金は必要であり、労働安全衛生法の労働時間の状況の把握の対象にも含まれるため、管理監督者の労働時間も記録しておく必要があります。

裁量労働制・みなし労働時間制

裁量労働制や事業場外みなし労働時間制の従業員は、決められた時間を働いたものとみなして賃金を計算します。

それでも、労働安全衛生法の労働時間の状況の把握の対象には含まれており、深夜や休日に働いた場合の割増賃金も必要になるため、実際の労働時間を把握しておく必要があります。

派遣社員

派遣社員の場合は、労働時間・休憩・休日の管理は、実際に業務の指示をしている派遣先の会社が行う義務を負います。

一方で、36協定の締結や割増賃金の支払い、有給休暇の付与は、雇用主である派遣元の会社の義務です。

派遣先は、派遣社員の労働時間を記録し、派遣元に正しく通知することが求められます。

対象外となる高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度の適用者は、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金の規定が適用されず、労働安全衛生法の労働時間の状況の把握の対象からも除かれています。

ただし、高度プロフェッショナル制度の適用者についても、会社は健康管理時間を把握する必要があり、まったく管理しなくてよいわけではありません。

このように、勤怠管理の義務は、正社員だけでなくパートやアルバイトにも適用され、管理監督者や裁量労働制の従業員も把握の対象に含まれ、高度プロフェッショナル制度の適用者だけが対象外とされています。

次は、労働時間を客観的に把握する方法と、自己申告制の条件を確認します。

労働時間を客観的に把握する方法と自己申告制の条件

労働時間は、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な方法で把握することが原則で、従業員の自己申告による把握は、ガイドラインが定める措置をすべて講じた場合に限って例外的に認められます。

エクセルや紙の出勤簿に従業員が自分で時刻を書き込む方法は自己申告にあたるため、そのまま運用しているだけでは義務を満たせないおそれがあります。

客観的な方法として認められる記録

ガイドラインでは、始業・終業時刻を確認・記録する方法として、以下の2つが原則とされています。

  • 会社が自ら現認することにより確認し、記録する
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認し、記録する

スマホやパソコンから打刻した時刻がそのまま記録される勤怠管理システムも、客観的な記録として扱われます。

打刻後に時刻を修正する場合は、誰が、いつ、どのような理由で修正したのかを記録に残しておくことで、客観性を保つことができます。

自己申告制で会社がとるべき措置

やむを得ず自己申告で労働時間を把握する場合、ガイドラインでは会社に以下の措置を求めています。

  • 従業員に対して、労働時間を実態どおりに正しく申告するよう十分に説明する
  • 労働時間を管理する者に対しても、自己申告制の適正な運用について十分に説明する
  • 申告された時間と実際の労働時間が合っているか、必要に応じて実態調査を行い、補正する
  • 休憩や自主的な研修などで事業場にいた時間について、報告された理由が適正か確認する
  • 申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、適正な申告を妨げる措置を講じない

特に、パソコンの使用時間や入退室の記録と、申告された時刻に大きなずれがある場合は、実態調査を行って補正することが求められます。

これらの措置を継続して講じる手間を考えると、最初から客観的な方法で記録する方が、会社の負担は小さくなります。

このように、労働時間は客観的な方法で把握することが原則で、自己申告による把握は、ガイドラインが定める措置をすべて講じた場合に限って例外的に認められます。

次は、勤怠管理の義務に違反した場合の罰則を確認します。

勤怠管理の義務に違反した場合の罰則

勤怠管理の義務に違反した場合の罰則は義務ごとに異なり、記録の保存や賃金台帳の違反には30万円以下の罰金、労働時間の上限や割増賃金の違反には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。

罰則だけでなく、未払い残業代の請求や労働基準監督署の是正勧告など、実務上の影響も大きくなります。

義務ごとの罰則

勤怠管理に関わる主な義務の罰則は、以下の通りです。

義務 罰則
労働時間の状況の把握(労働安全衛生法) 罰則の定めなし
賃金台帳の記入、記録の保存 30万円以下の罰金
年次有給休暇管理簿の作成・保存 罰則の定めなし
年5日の有給休暇の取得 30万円以下の罰金
法定労働時間、時間外労働の上限、休憩、休日 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
時間外・休日・深夜の割増賃金の支払い 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

罰則の定めがない義務でも、労働基準監督署の調査では指導の対象になります。

未払い残業代のリスクや、労働基準監督署の調査の流れについては、勤怠管理がない会社のリスクを解説した記事で詳しく紹介しています。

有給休暇5日の取得義務の罰則は従業員1人ごと

年5日の有給休暇を取得させる義務の違反は、対象となる従業員1人につき1つの違反として扱われます。

たとえば、年5日を取得できていない従業員が10人いれば、10件の違反となり、罰金の上限もその分だけ重くなる可能性があります。

年5日の取得状況は、年度の途中から従業員ごとに確認し、取得が進んでいない従業員には会社から時季を指定して取得させる必要があります。

このように、勤怠管理の義務に違反した場合の罰則は義務ごとに異なり、記録の保存や賃金台帳の違反には30万円以下の罰金、労働時間の上限や割増賃金の違反には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。

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