労働基準法の有給休暇のルールとは?条文と罰則・判例について
有給休暇休暇の扱いについて従業員から質問を受けたとき、社内の慣習だけで答えてよいのか、不安になる場面があります。
そのため、労働基準法で有給休暇がどのように定められているのか、条文から確かめたいと考える担当者は少なくありません。
会社が守らなければならない義務は何か、違反した場合にどのような罰則があるのかも気になるところです。
法律の内容を正しく理解していないと、知らないうちに違法な運用を続けてしまうおそれがあります。
労働基準法の有給休暇について、条文の内容から会社の義務、罰則や判例まで順に確かめていきます。
労働基準法の有給休暇のルールとは?
労働基準法の有給休暇のルールは主に第39条に定められており、付与の要件や日数、取り方、会社の義務などを第1項から第10項で規定しています。
有給休暇は労働基準法第39条で定められている
有給休暇の正式な名称は年次有給休暇で、労働基準法第39条に定められています。
第39条第1項では、以下の通り定めています。
「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」
このほか、時効は第115条、取得を理由とする不利益な扱いの禁止は附則第136条、罰則は第119条と第120条に定められています。
法律の基準は最低限で、下回る定めは無効
労働基準法で定める基準に達しない労働条件は、その部分が無効となり、労働基準法の基準によります(労働基準法第13条)。
就業規則で付与日数を法律より少なくしたり、繰越を認めないと定めたりしても、その部分は無効です。
反対に、法律より多くの日数を付与するなど、従業員に有利な定めは認められます。
第39条の各項の内容
労働基準法第39条の各項の内容は、以下の通りです。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 6か月の継続勤務と8割以上の出勤で10日を付与する |
| 第2項 | 勤続年数に応じて付与日数を増やす(最大20日) |
| 第3項 | 所定労働日数が少ない従業員には比例した日数を付与する |
| 第4項 | 労使協定で、年5日まで時間単位で付与できる |
| 第5項 | 従業員が請求した時季に与える(会社の時季変更権) |
| 第6項 | 労使協定で、5日を超える分を計画的に付与できる |
| 第7項 | 10日以上付与した従業員に、年5日を時季を指定して与える |
| 第8項 | 従業員が取得した日数などは、第7項の5日から差し引ける |
| 第9項 | 取得日の賃金の計算方法 |
| 第10項 | 出勤率の計算で出勤したとみなす期間 |
このように、労働基準法の有給休暇のルールは主に第39条に定められており、付与の要件や日数、取り方、会社の義務などを第1項から第10項で規定しています。
次は、労働基準法で定める有給休暇の付与を解説します。
労働基準法で定める有給休暇の付与
労働基準法で定める有給休暇は、6か月の継続勤務と8割以上の出勤を条件に付与され、日数は勤続年数と所定労働日数に応じて決まり、付与日から2年で時効により消滅します。
付与の要件
有給休暇は、雇入れの日から6か月継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した従業員に付与します(労働基準法第39条第1項)。
8割以上の出勤の要件は、最初の6か月だけでなく、その後の1年ごとの付与でも、直前の1年間の出勤率で毎回判定します。
条件を満たした従業員には、申請や会社の許可がなくても、法律によって当然に有給休暇の権利が発生します。
付与日数
フルタイムの従業員には、勤続年数に応じて以下の日数を付与します(労働基準法第39条第2項)。
| 勤続年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下のパートなどには、所定労働日数に応じた日数を付与します(労働基準法第39条第3項)。
パートの付与日数はパートの有給休暇の日数の記事で、付与日の決め方は有給休暇の付与日の記事で詳しく解説しています。
出勤したとみなす期間と時効
出勤率を計算する際は、以下の期間を出勤したものとみなします(労働基準法第39条第10項)。
- 業務上のけがや病気で休業した期間
- 産前産後休業の期間
- 育児休業・介護休業の期間
有給休暇を取得した日も、出勤したものとして扱います。
一方で、本人の都合による休職などは法律に定めがないため、出勤した日には含めないのが一般的です。
有給休暇を請求する権利は、付与日から2年で時効により消滅します(労働基準法第115条)。
このように、労働基準法で定める有給休暇は、6か月の継続勤務と8割以上の出勤を条件に付与され、日数は勤続年数と所定労働日数に応じて決まり、付与日から2年で時効により消滅します。
次は、労働基準法で定める有給休暇の取り方を解説します。
労働基準法で定める有給休暇の取り方
労働基準法で定める有給休暇は、従業員が請求した時季に与えるのが原則で、労使協定を結べば時間単位の取得や計画的付与もでき、取得した日には法律で定める方法で計算した賃金を支払います。
時季指定権と時季変更権
会社は、有給休暇を従業員が請求する時季に与えなければなりません(労働基準法第39条第5項)。
ただし、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社は他の時季に変更させることができます(同項ただし書)。
従業員が取得する日を指定する権利を時季指定権、会社が別の日に変更させる権利を時季変更権といいます。
有給休暇をどのように使うかは従業員の自由であり、会社が理由によって与えるかどうかを決めることはできません。
時間単位年休と計画的付与
労使協定を結べば、1年に5日分までは時間単位で有給休暇を与えることができます(労働基準法第39条第4項)。
また、労使協定を結べば、付与した日数のうち5日を超える分について、会社が取得する日を計画的に割り振ることができます(労働基準法第39条第6項)。
| 制度 | 条文 | 労使協定 | 上限 |
|---|---|---|---|
| 時間単位年休 | 第4項 | 必要 | 年5日分まで |
| 計画的付与 | 第6項 | 必要 | 5日を超える分 |
半日単位の取得は法律に定めがないため、会社が就業規則で認める場合に取得できます。
取得日の賃金
有給休暇を取得した日には、以下のいずれかの方法で計算した賃金を支払います(労働基準法第39条第9項)。
- 所定労働時間働いた場合に支払う通常の賃金
- 平均賃金
- 健康保険の標準報酬月額の30分の1(労使協定が必要)
どの方法にするかは就業規則などで定め、従業員ごとやその都度選ぶことはできません。
計算の方法と計算例は、有給休暇の金額の記事で詳しく解説しています。
このように、労働基準法で定める有給休暇は、従業員が請求した時季に与えるのが原則で、労使協定を結べば時間単位の取得や計画的付与もでき、取得した日には法律で定める方法で計算した賃金を支払います。
次は、労働基準法で会社に義務づけられた有給休暇の管理を解説します。
労働基準法で会社に義務づけられた有給休暇の管理
労働基準法では、会社に年5日の有給休暇を取得させる義務、年次有給休暇管理簿の作成、就業規則への記載を義務づけ、取得を理由とする不利益な扱いを禁止しています。
年5日の時季指定義務
会社は、有給休暇を10日以上付与した従業員に、付与日から1年以内に5日について、時季を指定して取得させなければなりません(労働基準法第39条第7項)。
ただし、従業員が自分で請求して取得した日数や、計画的付与で取得した日数は、5日から差し引くことができます(労働基準法第39条第8項)。
会社が時季を指定する場合は、あらかじめ従業員の意見を聞き、その意見を尊重するよう努めなければなりません。
年次有給休暇管理簿
会社は、従業員ごとに、有給休暇を取得した時季、日数、基準日を記録した年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません(労働基準法施行規則第24条の7)。
管理簿は、有給休暇を与えた期間中と、その期間が終わった後も保存する必要があり、期間が終わった後の保存期間は当分の間3年とされています。
管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作成することもできます。
就業規則への記載
休暇に関する事項は、就業規則に必ず記載しなければならない事項です(労働基準法第89条)。
年5日の取得義務を果たすために会社が時季を指定する場合は、時季を指定する対象の従業員の範囲と、指定の方法を就業規則に記載しておく必要があります。
取得日の賃金の計算方法や、半日単位の取得を認める場合のルールも、就業規則に定めておきます。
不利益取扱いの禁止
会社は、有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額その他不利益な扱いをしないようにしなければなりません(労働基準法附則第136条)。
厚生労働省は、有給休暇を取得したことを賞与の査定でマイナスに評価することは、この規定に抵触するため許されないとしています。
精皆勤手当や賞与の計算、昇給の判定で有給休暇の日を欠勤と同じに扱う運用は、見直す必要があります。
このように、労働基準法では、会社に年5日の有給休暇を取得させる義務、年次有給休暇管理簿の作成、就業規則への記載を義務づけ、取得を理由とする不利益な扱いを禁止しています。
次は、労働基準法の有給休暇に違反した場合の罰則と判例を解説します。
労働基準法の有給休暇に違反した場合の罰則と判例
労働基準法の有給休暇に違反した場合は、違反した条文に応じて6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となり、最高裁の判例でも年休権や時季変更権、不利益な扱いについての考え方が示されています。
条文ごとの罰則
有給休暇に関する主な罰則は、以下の通りです。
| 違反の内容 | 違反する条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 請求された時季に有給休暇を与えない、法定の日数を付与しない | 第39条(第7項を除く) | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第119条) |
| 年5日を取得させない | 第39条第7項 | 30万円以下の罰金(第120条) |
| 時季指定について就業規則に記載していない | 第89条 | 30万円以下の罰金(第120条) |
違反した担当者だけでなく、会社にも罰金が科されることがあります(労働基準法第121条)。
年5日の取得義務の違反は、対象となる従業員1人ごとに1つの違反として扱われるため、取得させなかった従業員が多いほど罰金の額も大きくなりえます。
年休権と時季変更権に関する判例
有給休暇の権利や時季変更権について、最高裁は以下の判断を示しています。
| 事件 | 判決 | 判断の要旨 |
|---|---|---|
| 白石営林署事件 | 最高裁 昭和48年3月2日 | 年休権は要件を満たせば法律上当然に発生し、従業員の請求や会社の承認によって生じるものではない |
| 此花電報電話局事件 | 最高裁 昭和57年3月18日 | 休暇の直前に請求され、会社に判断する時間がなかった場合でも、時季変更の事由があり、遅れずに行使すれば時季変更権の行使は適法 |
| 弘前電報電話局事件 | 最高裁 昭和62年7月10日 | 通常の配慮をすれば代わりの人を確保できたのに配慮を怠った場合は、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらない |
時季変更権は、忙しいという理由だけでは行使できず、代わりの人を手配するなどの配慮をしても業務が回らない場合に限られます。
不利益な扱いに関する判例
有給休暇を取得した日の扱いについて、最高裁は以下の判断を示しています。
| 事件 | 判決 | 判断の要旨 |
|---|---|---|
| 日本シェーリング事件 | 最高裁 平成元年12月14日 | 昇給の要件となる出勤率の計算で、有給休暇の日を欠勤と同じに扱うことは無効 |
| エス・ウント・エー事件 | 最高裁 平成4年2月18日 | 賞与の計算で、有給休暇の日を欠勤と同じに扱うことは無効 |
| 沼津交通事件 | 最高裁 平成5年6月25日 | 皆勤手当の計算で有給休暇の日を除いた措置は、手当の割合が小さく取得を抑える効果が大きくないとして、望ましくないが無効とまではいえない |
沼津交通事件のように無効とまではいえないとされた例もありますが、取得をためらわせる扱いは望ましくないとされているため、有給休暇の日を欠勤と同じに扱う運用は避けるべきです。
このように、労働基準法の有給休暇に違反した場合は、違反した条文に応じて6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となり、最高裁の判例でも年休権や時季変更権、不利益な扱いについての考え方が示されています。
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