フレックスタイム制のデメリットとは?会社と従業員の対策について

フレックスタイム

始業と終業の時刻を従業員が自分で決められる働き方は、働きやすさを打ち出したい会社を中心に導入の検討が進んでいます。

一方で、フレックスタイム制のデメリットを十分に確かめないまま取り入れ、思っていた運用と違ったという声が出る職場もあります。

導入を検討する場で話題になるのは働きやすさのほうが多く、運用の負担まで具体的に見通せている会社は多くありません。

フレックスタイム制のデメリットを、会社と従業員それぞれの立場や給与計算の観点から掘り下げていきます。

フレックスタイム制のデメリットとは?

フレックスタイム制のデメリットとは、社内の連携や顧客対応のしにくさ、従業員の自己管理の難しさに加えて、残業や不足時間を1日単位ではなく清算期間の総労働時間で判定するため、勤怠管理と給与計算が複雑になることです。

フレックスタイム制のデメリットの多くは、制度の仕組みそのものから生まれています。

まずは、フレックスタイム制がどのような仕組みで運用されるのかを確認しておきましょう。

フレックスタイム制の仕組み

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ総労働時間を決めておき、その範囲内で従業員が日々の始業・終業の時刻を自分で決めて働く制度です。

フレックスタイム制で使われる主な用語は、以下の通りです。

用語 内容
清算期間 労働時間を清算する単位となる期間。上限は3か月で、1か月とする会社が多い
総労働時間 清算期間の中で働くべき時間として、労使協定で定める時間
法定労働時間の総枠 清算期間の中で働かせることができる法定の上限。40時間×清算期間の暦日数÷7で求める
コアタイム 必ず勤務しなければならない時間帯。設けるかどうかは任意
フレキシブルタイム 従業員が出退勤の時刻を自由に決められる時間帯

清算期間を1か月とした場合の法定労働時間の総枠は、暦日数が31日の月で177.1時間、30日の月で171.4時間、29日の月で165.7時間、28日の月で160.0時間です。

会社側と従業員側のデメリット一覧

フレックスタイム制のデメリットを、会社側と従業員側に分けて整理すると、以下のようになります。

立場 主なデメリット
会社側 社内の連携・会議の調整が難しくなる
会社側 顧客・取引先への対応が遅れることがある
会社側 勤怠管理と残業の計算が複雑になる
会社側 導入に就業規則の規定と労使協定の締結が必要
会社側 制度を使えない職種との間に不公平感が生まれる
従業員側 自己管理が必要で、長時間労働になりやすい
従業員側 総労働時間に足りないと給料が減る場合がある
従業員側 仕事とプライベートの境目があいまいになる

会社側のデメリットは運用と管理の負担に、従業員側のデメリットは自己管理と収入の面に集中しています。

このように、フレックスタイム制のデメリットとは、社内の連携や顧客対応のしにくさ、従業員の自己管理の難しさに加えて、残業や不足時間を1日単位ではなく清算期間の総労働時間で判定するため、勤怠管理と給与計算が複雑になることです。

次は、会社側から見たフレックスタイム制のデメリットを確認します。

会社側から見たフレックスタイム制のデメリット

会社側から見たフレックスタイム制のデメリットは、社内の連携や顧客対応がしにくくなること、勤怠管理と残業の計算が複雑になること、導入に就業規則と労使協定の手続きが必要になること、制度を使えない職種との不公平感が生まれることです。

いずれも、制度を導入する前に対策を決めておかなければ、導入後に現場の負担として表面化します。

社内の連携・会議の調整が難しくなる

フレックスタイム制では、従業員ごとに出勤と退勤の時刻が異なるため、全員がそろう時間が短くなります。

会議を設定できる時間帯が限られたり、相談したい相手がまだ出勤していなかったりと、情報共有や意思決定に時間がかかるようになります。

コアタイムを設けない、またはコアタイムが短い場合ほど、この傾向は強くなります。

顧客・取引先への対応が遅れる

取引先の営業時間は決まっているため、担当者が出勤していない時間帯に問い合わせが入ると、対応が遅れることがあります。

担当者が不在の間にほかの従業員が代わりに対応する体制がなければ、顧客の不満につながるおそれがあります。

勤怠管理と残業の計算が複雑になる

フレックスタイム制では、1日8時間・週40時間を超えたかどうかではなく、清算期間の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えたかどうかで時間外労働を判定します。

さらに、総労働時間に足りない時間の扱いや、清算期間が1か月を超える場合の判定も加わるため、固定時間制と同じ集計方法では正しく計算できません。

紙のタイムカードやエクセルで管理している会社では、この計算の切り替えが大きな負担になります。

導入に就業規則の規定と労使協定が必要

フレックスタイム制を導入するには、就業規則に、始業と終業の時刻を従業員の決定に委ねることを定める必要があります。

あわせて、労使協定で以下の事項を定めなければなりません。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間
  • 標準となる1日の労働時間
  • コアタイム(設ける場合)
  • フレキシブルタイム(設ける場合)

清算期間を1か月を超える期間とする場合は、労使協定を労働基準監督署に届け出る必要があり、届け出なかった場合は30万円以下の罰金の対象になります。

制度を使えない職種との不公平感

窓口業務や店舗、製造ラインなど、勤務時間が業務に合わせて固定される職種では、フレックスタイム制を導入しても実際には使えないことがあります。

同じ会社の中で制度を使える部署と使えない部署が分かれると、使えない側の従業員に不公平感が生まれやすくなります。

このように、会社側から見たフレックスタイム制のデメリットは、社内の連携や顧客対応がしにくくなること、勤怠管理と残業の計算が複雑になること、導入に就業規則と労使協定の手続きが必要になること、制度を使えない職種との不公平感が生まれることです。

次は、従業員側から見たフレックスタイム制のデメリットを確認します。

従業員側から見たフレックスタイム制のデメリット

従業員側から見たフレックスタイム制のデメリットは、自分で労働時間を管理する必要があり長時間労働になりやすいこと、総労働時間に足りないと給料が減る場合があること、仕事とプライベートの境目があいまいになることです。

働く時間を自由に決められる反面、その時間の管理は従業員自身に委ねられます。

自己管理が必要で長時間労働になりやすい

フレックスタイム制では、日々の労働時間を自分で調整するため、清算期間の途中で自分がどれだけ働いたかを把握しておく必要があります。

仕事が多い日に遅くまで働くことが続くと、気づかないうちに清算期間の総労働時間を大きく超えてしまうことがあります。

自己管理が苦手な従業員ほど、生活のリズムが崩れたり、長時間労働になったりしやすくなります。

総労働時間に足りないと給料が減る場合がある

清算期間の実際の労働時間が、労使協定で定めた総労働時間に足りなかった場合、会社は不足した時間分の賃金を控除することができます。

清算期間の終わりに働いた時間が足りないことに気づいても取り戻す時間がないため、月の途中で自分の労働時間を確認しておかないと、思わぬ減額につながります。

仕事とプライベートの境目があいまいになる

働く時間を自由に決められることで、いつでも仕事ができる状態になり、休むべき時間にも仕事の連絡に対応してしまうことがあります。

テレワークと組み合わせている場合は特に、仕事を終える時刻を自分で決めておかないと、勤務時間が長引きやすくなります。

このように、従業員側から見たフレックスタイム制のデメリットは、自分で労働時間を管理する必要があり長時間労働になりやすいこと、総労働時間に足りないと給料が減る場合があること、仕事とプライベートの境目があいまいになることです。

次は、賃金計算で起きやすいフレックスタイム制のデメリットを確認します。

賃金計算で起きやすいフレックスタイム制のデメリット

賃金計算で起きやすいフレックスタイム制のデメリットは、遅刻や早退を理由に賃金を控除できないこと、残業を清算期間の総枠で判定すること、清算期間が1か月を超える場合に月ごとの判定が加わること、不足時間と超過時間で扱いが異なることです。

固定時間制と同じ感覚で給与を計算すると、未払いや過払いが起きやすいため、導入前に計算のルールを押さえておく必要があります。

遅刻・早退の控除ができない

フレックスタイム制では、始業と終業の時刻を従業員が決めるため、固定時間制のような遅刻や早退という考え方がありません。

コアタイムに遅れて出勤した場合でも、清算期間の総労働時間を満たしていれば、遅れた時間分の賃金を差し引くことはできません。

コアタイムを守らない従業員への対応は、賃金の控除ではなく、就業規則にもとづく注意や人事評価で行う必要があります。

残業は清算期間の総枠で判定する

フレックスタイム制では、1日に8時間を超えて働いた日があっても、その日だけで時間外労働にはなりません。

時間外労働になるのは、清算期間の実際の労働時間の合計が、法定労働時間の総枠を超えた部分です。

たとえば、清算期間が1か月で暦日数が30日の月であれば、総枠は171.4時間で、実際の労働時間が180時間なら、超えた約8.6時間が時間外労働になります。

なお、深夜労働や法定休日の労働の割増賃金は、フレックスタイム制であっても通常どおり必要です。

清算期間1か月超は届出と週50時間超の判定が必要

2019年4月の法改正により、清算期間の上限は1か月から3か月に延びました。

清算期間を1か月を超える期間とする場合は、清算期間全体の総枠に加えて、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないことが条件になり、超えた部分はその月の時間外労働として扱います。

労使協定の届出も必要になるため、清算期間を長くするほど、管理の手間は大きくなります。

不足時間の繰越と控除のルール

清算期間の実際の労働時間が総労働時間に足りなかった場合の扱いは、以下の2つです。

  • 不足した時間分の賃金を控除して支払う
  • 不足した時間を翌月の清算期間の総労働時間に加えて繰り越す

繰り越す場合は、翌月の総労働時間に加えた時間が、法定労働時間の総枠の範囲内に収まっていなければなりません。

一方で、総労働時間を超えて働いた時間を翌月に繰り越し、翌月の不足分と相殺することは、賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に反するため認められていません。

超えた時間分の賃金は、その清算期間の賃金として支払う必要があります。

このように、賃金計算で起きやすいフレックスタイム制のデメリットは、遅刻や早退を理由に賃金を控除できないこと、残業を清算期間の総枠で判定すること、清算期間が1か月を超える場合に月ごとの判定が加わること、不足時間と超過時間で扱いが異なることです。

次は、フレックスタイム制が向いていない職種や会社を確認します。

フレックスタイム制が向いていない職種・会社

フレックスタイム制が向いていないのは、窓口・店舗・製造ラインのように勤務時間が業務に合わせて固定される職種や、チームでの同時作業や対面のやり取りが多い職場で、こうした職場ではデメリットの方が大きくなりやすくなります。

制度の向き不向きは、会社全体ではなく、職種や部署ごとに判断することが大切です。

時間が固定される業務

以下のような業務は、勤務する時間帯が業務の都合で決まるため、フレックスタイム制のメリットを生かしにくい職種です。

  • 店舗の販売や接客など、営業時間に合わせて人員を配置する業務
  • 役所や銀行の窓口、受付など、対応時間が決まっている業務
  • 製造ラインなど、複数の人が同じ時間に作業する業務
  • 介護や警備など、シフトで人員を確保する必要がある業務

こうした職種では、フレックスタイム制ではなく、シフト制や時差出勤、1か月単位の変形労働時間制の方が運用しやすい場合があります。

チームでの同時作業が多い職場

会議や打ち合わせが多く、対面でのやり取りを前提に仕事を進めている職場では、従業員の勤務時間がばらばらになることで、仕事の進み方が遅くなることがあります。

このような職場で導入する場合は、コアタイムを長めに設けるなど、全員がそろう時間を確保する工夫が必要です。

このように、フレックスタイム制が向いていないのは、窓口・店舗・製造ラインのように勤務時間が業務に合わせて固定される職種や、チームでの同時作業や対面のやり取りが多い職場で、こうした職場ではデメリットの方が大きくなりやすくなります。

次は、フレックスタイム制のデメリットへの対策を確認します。

フレックスタイム制のデメリットへの対策

フレックスタイム制のデメリットへの対策は、コアタイムと連絡のルールを決めて連携のしにくさを補い、清算期間と総労働時間を勤怠管理システムで管理して計算の負担を減らし、長時間労働や不足時間を早めに把握できる仕組みをつくることです。

制度の自由度を残しながら、管理の仕組みで弱点を補うことがポイントです。

コアタイムの設定と連絡のルール

会議や打ち合わせが必要な部署では、コアタイムを設けて全員がそろう時間を確保し、会議はその時間帯に入れるというルールにしておくと、連携のしにくさを補えます。

あわせて、出勤・退勤の予定を共有する方法や、不在時に顧客対応を代わる担当を決めておけば、顧客対応の遅れも防げます。

清算期間と総労働時間を勤怠システムで管理する

清算期間ごとの総労働時間、法定労働時間の総枠を超えた時間外労働、総労働時間に足りない不足時間は、手作業で計算するとミスが起きやすい部分です。

フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを使えば、打刻のデータから時間外労働と不足時間を自動で集計でき、給与計算に必要な時間数をそのまま取り出せます。

従業員にとっても、清算期間の途中で自分の労働時間を確認できるため、月末になって不足に気づくという事態を防げます。

長時間労働の把握とアラート

フレックスタイム制では、日ごとの労働時間が長くても、その日の時点では時間外労働として表に出ません。

清算期間の途中でも労働時間の合計が多い従業員を把握できるよう、残業時間が一定を超えた時点で知らせるアラートを使うと、長時間労働を早めに防げます。

時間外労働の上限規制や36協定の上限は、フレックスタイム制でも同じように適用されるため、上限に近づいている従業員の把握も欠かせません。

このように、フレックスタイム制のデメリットへの対策は、コアタイムと連絡のルールを決めて連携のしにくさを補い、清算期間と総労働時間を勤怠管理システムで管理して計算の負担を減らし、長時間労働や不足時間を早めに把握できる仕組みをつくることです。

次は、フレックスタイム制の勤怠管理に使える勤怠クラウドを紹介します。

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所定総労働時間に足りない時間は「フレックス不足」として別に集計されるため、不足時間の控除や繰越の判断に必要な時間数をすぐに確認できます。

フレックスタイム制のグループは予定時刻を持たないため、遅刻や早退の判定の対象にはなりません。

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