フレックスタイム制の不足時間控除とは?計算方法と繰越について
フレックスタイム働く時間を自分で配分できる分、月末になって予定していた時間に届かなかったという従業員も出てきます。
そのような月の給与で、フレックスタイム制の不足時間控除をどのように計算すればよいのか、迷う担当者は少なくありません。
足りなかった分を翌月に回せるのか、有給を取った月はどう数えるのかなど、固定時間制の欠勤とは違う考え方が求められます。
フレックスタイム制の不足時間控除について、計算の手順から翌月への繰越、規程の整え方まで順に確かめていきます。
フレックスタイム制の不足時間控除とは?
フレックスタイム制の不足時間控除とは、清算期間の労働時間が所定の総労働時間に足りなかった場合に、足りなかった時間分の賃金をその月の給与から差し引くことで、控除する代わりに翌月に繰り越す方法もあります。
不足時間とは
フレックスタイム制では、労使協定で清算期間における総労働時間を定め、その時間を清算期間の中で働いてもらいます。
清算期間の実際の労働時間(有給休暇を取った日の時間を含む)が、この所定の総労働時間に足りなかった場合の差が、不足時間です。
たとえば、所定の総労働時間が160時間の月に、実際の労働時間が150時間だった場合は、10時間が不足時間になります。
控除の考え方
働かなかった時間の賃金を支払わないことは、ノーワーク・ノーペイの原則として認められています。
フレックスタイム制では、1日ごとの所定労働時間が決まっていないため、日ごとの遅刻や欠勤ではなく、清算期間の合計で足りなかった時間を控除の対象にします。
そのため、ある日に短い時間しか働かなかったとしても、清算期間の合計で所定の総労働時間を満たしていれば、控除はできません。
控除するか繰り越すかは、会社の定めによる
不足時間の扱いには、その月の給与から控除する方法と、翌月の総労働時間に上乗せして繰り越す方法があります。
| 方法 | 内容 | 従業員への影響 |
|---|---|---|
| 控除 | 不足時間分の賃金を、その月の給与から差し引く | その月の給与が減る |
| 繰越 | 不足時間を翌月の総労働時間に上乗せする | その月の給与は減らないが、翌月に長く働く必要がある |
どちらの方法をとるか、繰越の上限を超えた場合にどうするかは、就業規則や賃金規程、労使協定に定めておく必要があります。
このように、フレックスタイム制の不足時間控除とは、清算期間の労働時間が所定の総労働時間に足りなかった場合に、足りなかった時間分の賃金をその月の給与から差し引くことで、控除する代わりに翌月に繰り越す方法もあります。
次は、フレックスタイム制の不足時間控除の計算方法を解説します。
フレックスタイム制の不足時間控除の計算方法
フレックスタイム制の不足時間控除は、実際の労働時間に有給休暇の時間を加えて不足時間を求め、月給を1か月平均の所定労働時間で割った時間単価を掛けて計算します。
不足時間の求め方
不足時間は、以下の計算式で求めます。
不足時間 = 所定の総労働時間 −(実際の労働時間 + 有給休暇の時間)
有給休暇を取った日は、労使協定で定めた標準となる1日の労働時間を働いたものとして加えます。
有給休暇の時間を加えずに計算すると、有給休暇を取った分まで控除してしまい、有給休暇を取ったことで給与が減るという誤りになります。
時間単価の求め方
月給制の場合、1時間あたりの賃金は、月給を1か月平均の所定労働時間で割って求めるのが一般的です。
1か月平均の所定労働時間は、年間の所定労働時間を12で割って求めます。
フレックスタイム制では月ごとに所定の総労働時間が変わることがあるため、その月の所定の総労働時間で割るのか、1か月平均の所定労働時間で割るのかを、賃金規程で定めておく必要があります。
計算例
月給30万円、1か月平均の所定労働時間を160時間、標準となる1日の労働時間を8時間とした場合の例は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所定の総労働時間 | 160時間 |
| 実際の労働時間 | 148時間 |
| 有給休暇(1日×8時間) | 8時間 |
| 不足時間 | 160時間−(148時間+8時間)=4時間 |
| 時間単価 | 30万円÷160時間=1,875円 |
| 控除額 | 1,875円×4時間=7,500円 |
この例で有給休暇の8時間を加えずに計算すると、不足時間が12時間、控除額が22,500円となり、15,000円を多く控除してしまいます。
控除する時間を切り上げない
不足時間を15分単位や30分単位で切り上げて控除すると、実際には働いた時間の賃金まで差し引くことになります。
働いた時間の賃金を差し引くことは、賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に反するため、控除する時間は1分単位で計算するか、従業員に不利にならない方向で端数を処理します。
このように、フレックスタイム制の不足時間控除は、実際の労働時間に有給休暇の時間を加えて不足時間を求め、月給を1か月平均の所定労働時間で割った時間単価を掛けて計算します。
次は、フレックスタイム制の不足時間控除の代わりに翌月に繰り越す方法を解説します。
フレックスタイム制の不足時間控除の代わりに翌月に繰り越す方法
フレックスタイム制の不足時間は、翌月の所定の総労働時間に上乗せして繰り越すことができますが、繰り越せるのは翌月の法定労働時間の総枠から翌月の所定を引いた時間までで、それを超えた分はその月に控除します。
繰越の上限は、翌月の総枠−翌月の所定
不足時間を繰り越すと、翌月は所定の総労働時間に繰り越した時間を加えた時間を働くことになります。
このとき、翌月の所定に繰り越した時間を加えた合計は、翌月の法定労働時間の総枠(40時間×暦日数÷7)を超えてはなりません。
総枠を超えて働かせる分は時間外労働となり、割増賃金が必要になるためです。
翌月が31日の月(総枠177.1時間)で、翌月の所定の総労働時間が168時間の場合、繰り越せる上限は以下の通りです。
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| 翌月の法定労働時間の総枠 | 177.1時間 |
| 翌月の所定の総労働時間 | 168時間 |
| 繰り越せる上限 | 9.1時間 |
上限を超えた分は、その月に控除する
不足時間が繰越の上限を超える場合は、上限までを翌月に繰り越し、超えた分はその月の給与から控除します。
先ほどの例で、その月の不足時間が12時間だった場合は、9.1時間を翌月に繰り越し、残りの2.9時間をその月に控除します。
繰り越した月も足りなかった場合と、退職する月
繰り越した翌月も、所定に繰り越し分を加えた時間に足りなかった場合は、その足りなかった時間を控除するか、さらに翌月に繰り越すかを、規程に沿って判断します。
繰越を何度も重ねると不足時間が積み上がり、後からまとめて控除することになりかねないため、繰越は翌月までに限ると定めておくと管理しやすくなります。
退職する月は翌月がないため、不足時間は繰り越せず、その月の給与で控除して清算します。
このように、フレックスタイム制の不足時間は、翌月の所定の総労働時間に上乗せして繰り越すことができますが、繰り越せるのは翌月の法定労働時間の総枠から翌月の所定を引いた時間までで、それを超えた分はその月に控除します。
次は、フレックスタイム制で不足時間控除ができないケースを解説します。
フレックスタイム制で不足時間控除ができないケース
フレックスタイム制で不足時間控除ができないのは、遅刻や欠勤を日単位で控除する場合、総労働時間を満たしている場合、有給休暇の日を入れずに計算する場合、超えた時間と別の月の不足を相殺する場合、会社が一方的に有給休暇で埋める場合です。
遅刻・欠勤を日単位で控除する
フレックスタイム制では1日ごとの所定労働時間が決まっていないため、コアタイムに遅れた時間や、勤務しなかった日の分を、日ごとに控除することはできません。
控除できるのは、清算期間の合計で所定の総労働時間に足りなかった時間だけです。
コアタイムにいなかった日を1日欠勤として扱い、ほかの時間帯に働いた時間までなかったことにすることも、働いた時間の賃金を支払わないことになるため認められません。
総労働時間を満たしているのに控除する
欠勤した日や遅刻した日があっても、ほかの日に長く働いて清算期間の総労働時間を満たしていれば、控除はできません。
勤務しなかった日や遅刻を問題にしたい場合は、人事評価や、就業規則に定めた懲戒など、賃金の控除とは別の方法で対応します。
有給休暇の日を入れずに計算する
有給休暇を取った日の時間を実際の労働時間に加えずに不足時間を計算すると、有給休暇の分まで控除することになります。
有給休暇を取ったことを理由に賃金を減らすことは認められないため、不足時間は必ず有給休暇の時間を加えて計算します。
超えた時間と、別の月の不足を相殺する
ある月に総労働時間を超えて働いた時間を翌月に繰り越し、翌月の不足時間と相殺することはできません。
超えた時間の賃金はその月に全額支払う必要があり、繰り越して相殺することは賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に反します。
会社が一方的に有給休暇で埋める
不足時間が出たからといって、会社が従業員の請求なしに有給休暇を充てて不足を埋めることはできません。
有給休暇は従業員が時季を指定して取得するものなので、不足時間を有給休暇に振り替えるかどうかは、本人の申し出によって判断します。
このように、フレックスタイム制で不足時間控除ができないのは、遅刻や欠勤を日単位で控除する場合、総労働時間を満たしている場合、有給休暇の日を入れずに計算する場合、超えた時間と別の月の不足を相殺する場合、会社が一方的に有給休暇で埋める場合です。
次は、フレックスタイム制の不足時間控除について、就業規則・賃金規程に定めることを解説します。
フレックスタイム制の不足時間控除で、就業規則・賃金規程に定めること
フレックスタイム制の不足時間控除を正しく運用するには、控除と繰越のどちらをとるかと繰越の上限、時間単価の計算方法、賞与・手当・固定残業代への影響を、就業規則や賃金規程に定めておくことが大切です。
控除か繰越か、繰越の上限
不足時間をその月に控除するのか、翌月に繰り越すのかを定めます。
繰り越す場合は、翌月の法定労働時間の総枠の範囲内に限ること、上限を超えた分は控除すること、繰越は翌月までとするかどうか、退職月は控除することもあわせて定めておきます。
時間単価の計算方法
控除額の計算に使う時間単価を、月給を1か月平均の所定労働時間で割るのか、その月の所定の総労働時間で割るのかを定めます。
時間単価の算定に含める手当と含めない手当も明確にしておくと、担当者による計算の違いを防げます。
賞与・手当・固定残業代への影響
不足時間を賞与の算定に反映させたい場合は、賞与規程にその旨と計算方法を定めておく必要があります。
精皆勤手当などの手当を不足時間の有無で増減させる場合も、支給条件として賃金規程に明記します。
固定残業代を支払っている場合、不足時間が出た月も固定残業代は原則として全額支払い、不足時間の控除は基本給の側で行うことを定めておくと、計算の混乱を防げます。
このように、フレックスタイム制の不足時間控除を正しく運用するには、控除と繰越のどちらをとるかと繰越の上限、時間単価の計算方法、賞与・手当・固定残業代への影響を、就業規則や賃金規程に定めておくことが大切です。
次は、フレックスタイム制の不足時間控除に必要な時間を集計できる勤怠クラウドを紹介します。
フレックスタイム制の不足時間控除に必要な時間を集計するなら勤怠クラウド
フレックスタイム制の不足時間控除に必要な時間を集計するなら、所定の総労働時間に足りない時間を「フレックス不足」として集計し、時間外労働も総枠で集計して出力できる勤怠クラウドがおすすめです。
勤怠クラウドは、中小企業向けの定額制の勤怠管理システムで、清算期間1か月のフレックスタイム制に対応しています。
所定に足りない時間を「フレックス不足」として自動で集計
従業員のグループごとに勤務形態をフレックスタイム制に設定し、清算期間の所定総労働時間を入力すると、その月の労働時間が所定に足りない時間が「フレックス不足」として集計されます。
フレックス不足は打刻した実際の労働時間をもとに集計されるため、有給休暇を取った月は、取得日数×標準となる1日の労働時間を加えたうえで控除する時間を確認します。
有給休暇の取得日数と残日数は、管理者のタイムカード画面で従業員ごとに確認できます。
時間外も総枠で集計
時間外労働は、その月の労働時間の合計が法定労働時間の総枠(40時間×暦日数÷7)を超えた分として集計され、日ごとの8時間超や週ごとの40時間超では判定しません。
フレックスタイム制のグループは遅刻や早退の判定の対象にもならないため、日単位で控除してしまう誤りを防げます。
CSV・Excel・PDFで出力し、控除額の計算に使える
集計結果は、従業員ごとに労働時間制・出勤日数・実働時間・時間外・うち月60時間超・深夜・法定休日・フレックス不足の列で、CSV・Excel・PDFに出力できます。
給与計算の担当者は、出力したフレックス不足の時間をもとに、控除額や翌月への繰越時間を計算できます。
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