フレックスタイム制のメリットとは?会社側と従業員側の観点について

フレックスタイム

始業と終業の時刻を従業員が自分で決められる働き方は、子育て中の人や通勤時間の長い人を中心に関心を集めています。

ところが、従業員30〜99人の会社に限ると、こうした働き方を取り入れているところは20社に1社ほどしかありません。

導入を考える経営者や人事担当者にとっては、フレックスタイム制のメリットが自社にも当てはまるのかが気になるところです。

ここでは、フレックスタイム制のメリットを、立場の違いや清算期間の長さ、職種ごとの向き不向き、運用の工夫まで含めて掘り下げます。

フレックスタイム制のメリットとは?

フレックスタイム制のメリットは、会社側にとっては採用や定着、残業代の抑制につながる点、従業員側にとっては通勤や私生活の予定に合わせて働く時間を決められる点にあります。

どちらのメリットも、1日単位ではなく、清算期間という一定の期間で労働時間を合わせればよいという制度の仕組みから生まれています。

フレックスタイム制の仕組み

フレックスタイム制は、清算期間の中で働く総労働時間をあらかじめ決めておき、その範囲で従業員が日々の始業と終業の時刻を自分で決める制度です(労働基準法第32条の3)。

導入するには、就業規則に始業と終業の時刻を従業員の決定に委ねることを定め、労使協定で対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間の総労働時間などを決める必要があります。

必ず出勤していなければならない時間帯としてコアタイムを、自由に出退勤できる時間帯としてフレキシブルタイムを設けることもできますが、どちらも設けるかどうかは任意です。

会社と従業員のメリット一覧

フレックスタイム制の主なメリットは、以下の通りです。

立場 メリット
会社側 採用でアピールしやすい
会社側 育児・介護と両立しやすくなり、辞める人が減る
会社側 忙しい日とそうでない日を調整でき、残業代を抑えられる
会社側 部署ごとに導入できる
従業員側 通勤ラッシュを避けられる
従業員側 通院・子どもの送り迎え・役所の手続きと両立できる
従業員側 遅刻・早退の扱いにならない
従業員側 仕事の量に合わせて働く時間を配分できる

それぞれのメリットの中身は、次の章以降で詳しく解説します。

フレックスタイム制を導入している企業の割合

厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、フレックスタイム制を採用している企業の割合は8.3%、フレックスタイム制が適用されている労働者の割合は11.1%です。

企業規模別の採用企業の割合は、以下の通りです。

企業規模 採用企業の割合 適用労働者の割合
1,000人以上 34.5% 17.6%
300〜999人 22.6% 11.8%
100〜299人 11.5% 6.6%
30〜99人 4.9% 3.2%
全体 8.3% 11.1%

大企業では3社に1社以上が採用している一方で、30〜99人の企業では5%未満にとどまっており、中小企業ではまだ導入している会社が少ない制度です。

導入している会社が少ないということは、中小企業がフレックスタイム制を導入すれば、同じ規模の会社の中で働き方の違いを打ち出しやすいということでもあります。

このように、フレックスタイム制のメリットは、会社側にとっては採用や定着、残業代の抑制につながる点、従業員側にとっては通勤や私生活の予定に合わせて働く時間を決められる点にあります。

次は、会社側から見たフレックスタイム制のメリットを解説します。

会社側から見たフレックスタイム制のメリット

会社側から見たフレックスタイム制のメリットは、採用でのアピール、育児や介護による離職の防止、日ごとの忙しさの差を吸収した残業代の抑制、部署ごとに導入できる柔軟さの4つです。

採用でアピールしやすい

フレックスタイム制は、求人票に「フレックスタイム制あり」と書けるため、働き方を重視する求職者に対するアピールになります。

前の章で見たとおり、30〜99人の企業でフレックスタイム制を採用しているのは4.9%なので、中小企業の求人の中では目に留まりやすい条件です。

特に、子育て中の人や、通勤時間が長い人など、時間の制約がある人を採用の対象に入れやすくなります。

育児・介護と両立しやすくなり、辞める人が減る

固定の勤務時間では、子どもの送り迎えや家族の通院の付き添いがあるたびに、遅刻や早退、休暇の取得が必要になります。

フレックスタイム制であれば、朝に送り迎えをしてから出勤し、その分を別の日に長く働くといった調整ができるため、育児や介護を理由に辞めなければならない状況を減らせます。

経験を積んだ従業員が辞めずに済めば、新たに採用して育てるための費用や時間もかからずに済みます。

忙しい日とそうでない日を調整でき、残業代を抑えられる

固定時間制では、1日8時間を超えて働いた時間はその日のうちに時間外労働となり、割増賃金が必要です。

フレックスタイム制では、時間外労働になるのは清算期間の労働時間の合計が法定労働時間の総枠(40時間×清算期間の暦日数÷7)を超えた部分だけで、1日単位では判定しません。

たとえば、月曜日に10時間働き、火曜日を6時間で切り上げた場合、固定時間制では月曜日の2時間が時間外労働になりますが、フレックスタイム制では清算期間の合計が総枠の中に収まっていれば時間外労働になりません。

忙しい日に長く働き、落ち着いている日に早く帰るという働き方が自然にできるため、会社にとっては割増賃金の対象になる時間を抑えられます。

ただし、総枠を超えた時間外労働には、固定時間制と同じく割増賃金の支払いが必要です。

従業員側から見た残業代の変わり方は、フレックスタイム制で給料が減る理由の記事で詳しく解説しています。

部署ごとに導入できる

フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲は労使協定で定めるため、会社全体ではなく、特定の部署や職種だけに導入できます。

たとえば、営業時間に合わせて店舗や窓口に立つ部署は固定時間制のままにして、社内で完結する仕事が多い事務や企画の部署だけをフレックスタイム制にするといった使い方ができます。

全社一斉に切り替える必要がないため、一部の部署で試してから対象を広げるという進め方も可能です。

このように、会社側から見たフレックスタイム制のメリットは、採用でのアピール、育児や介護による離職の防止、日ごとの忙しさの差を吸収した残業代の抑制、部署ごとに導入できる柔軟さの4つです。

次は、従業員側から見たフレックスタイム制のメリットを解説します。

従業員側から見たフレックスタイム制のメリット

従業員側から見たフレックスタイム制のメリットは、通勤ラッシュの回避、私用との両立、遅刻や早退の扱いにならないこと、仕事の量に合わせた時間配分の4つです。

通勤ラッシュを避けられる

出社と退社の時刻を自分で決められるため、混雑する時間帯をずらして通勤できます。

満員電車を避けられるだけでも、毎日の通勤による疲れは大きく変わります。

雨や雪で電車が遅れそうな日に、早めに出たり遅めに出たりといった調整もしやすくなります。

通院・子どもの送り迎え・役所の手続きと両立できる

病院や役所の多くは平日の日中しか開いていないため、固定時間制では半日休暇や有給休暇を使わなければならない場面が少なくありません。

フレックスタイム制であれば、朝に通院してから出勤したり、夕方に早めに退勤して子どもを迎えに行ったりして、その分を別の日に働いて合わせられます。

有給休暇を使わずに済む分、まとまった休みのために有給休暇を残しておけるのも、従業員にとってのメリットです。

遅刻・早退の扱いにならない

フレックスタイム制では、始業と終業の時刻を従業員が決めるため、決まった始業時刻に遅れたことを理由とする遅刻や、終業時刻より前に帰ったことを理由とする早退という扱いがありません。

清算期間の総労働時間を満たしていれば、ある日の出勤が遅くなっても、そのことを理由に賃金を差し引かれることはありません。

ただし、コアタイムを設けている場合は、その時間帯に勤務していることが求められるため、コアタイムに遅れることは別に問題になります。

仕事の量に合わせて働く時間を配分できる

仕事が立て込んでいる日は長く働き、手が空いている日は早めに切り上げるといったように、仕事の量に合わせて1日の労働時間を決められます。

やることがないのに終業時刻まで席にいる時間や、締め切り前に毎日同じ時間で区切られてしまう不便さが減ります。

自分で時間を配分する分、清算期間の途中で働いた時間を確認しながら進める習慣が必要になります。

このように、従業員側から見たフレックスタイム制のメリットは、通勤ラッシュの回避、私用との両立、遅刻や早退の扱いにならないこと、仕事の量に合わせた時間配分の4つです。

次は、清算期間の長さで変わるフレックスタイム制のメリットを解説します。

清算期間の長さで変わるフレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制のメリットは清算期間の長さによって変わり、1か月なら手続きと計算が簡単で、2〜3か月なら月をまたいで労働時間を調整できる一方、届出と月ごとの判定が必要になります。

2019年4月の労働基準法の改正により、清算期間の上限は1か月から3か月に延びました。

清算期間1か月:届出が不要で、計算が簡単

清算期間が1か月以内であれば、労使協定を労働基準監督署に届け出る必要はありません。

時間外労働は、その月の労働時間の合計が総枠を超えたかどうかだけで判定でき、給与計算の締めと清算期間をそろえやすいのもメリットです。

清算期間が1か月の場合の総枠は、以下の通りです。

月の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

はじめてフレックスタイム制を導入する会社は、まず清算期間1か月で始めると運用の負担が小さく済みます。

清算期間2〜3か月:月をまたいで調整できるが、届出と週50時間の判定が必要

清算期間を2〜3か月にすると、繁忙期の月に長く働き、閑散期の月に短く働くといったように、月をまたいで労働時間を調整できます。

1か月の清算期間では時間外労働になっていた繁忙月の労働時間も、翌月以降の短い労働時間と合わせて総枠に収まれば、時間外労働になりません。

一方で、清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を労働基準監督署に届け出る必要があり、届け出なかった場合は30万円以下の罰金の対象になります。

さらに、清算期間全体の総枠とは別に、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えた部分は、その月の時間外労働として割増賃金を支払わなければなりません。

月をまたいで調整できるメリットがある分、毎月の判定と清算期間の最後の判定の2段階で計算することになるため、勤怠の集計は複雑になります。

このように、フレックスタイム制のメリットは清算期間の長さによって変わり、1か月なら手続きと計算が簡単で、2〜3か月なら月をまたいで労働時間を調整できる一方、届出と月ごとの判定が必要になります。

次は、フレックスタイム制のメリットが出やすい職種・会社を解説します。

フレックスタイム制のメリットが出やすい職種・会社

フレックスタイム制のメリットが出やすいのは、一人で完結する仕事が多く、決まった時間に顧客対応をする必要が少ない職種で、中小企業でもそうした部署に絞れば導入しやすくなります。

一人で完結する仕事が多い職種

フレックスタイム制のメリットが出やすいのは、作業の進め方や時間配分を本人が決めやすい職種です。

たとえば、システム開発やデザイン、企画、経理や人事などの事務、研究開発などは、決まった時間に全員がそろっていなくても仕事が進めやすい職種です。

反対に、店舗の接客や工場のライン作業、電話の受付など、決まった時間に決まった人数が必要な仕事では、フレックスタイム制のメリットは出にくくなります。

フレックスタイム制が向いていない職種や会社については、フレックスタイム制のデメリットの記事で詳しく解説しています。

中小企業でも部署ごとなら導入しやすい

中小企業では、一人が複数の業務を兼ねていることが多く、全社でフレックスタイム制を導入すると、社内の連絡や顧客対応に支障が出ることがあります。

その場合でも、労使協定で対象となる労働者の範囲を限定すれば、社内で完結する仕事が多い部署だけをフレックスタイム制にできます。

固定時間制の部署とフレックスタイム制の部署が混在する場合は、部署ごとに労働時間の集計の仕方が変わるため、それぞれのルールで自動集計できる勤怠管理の仕組みを用意しておくと運用が安定します。

このように、フレックスタイム制のメリットが出やすいのは、一人で完結する仕事が多く、決まった時間に顧客対応をする必要が少ない職種で、中小企業でもそうした部署に絞れば導入しやすくなります。

次は、フレックスタイム制のメリットを活かす運用のポイントを解説します。

フレックスタイム制のメリットを活かす運用のポイント

フレックスタイム制のメリットを活かすには、コアタイムの決め方、清算期間の途中での労働時間の確認、総枠を超えた時間外労働の正しい支払いの3つを押さえておくことが大切です。

コアタイムを設けるかどうかと、その時間帯

コアタイムを設けると、会議や打ち合わせの時間をそろえやすくなる一方で、出退勤を自由に決められる時間が短くなり、従業員側のメリットは小さくなります。

コアタイムを設ける場合は、全員がそろう必要がある時間帯だけに絞り、長くしすぎないことがポイントです。

コアタイムを設けない場合は、会議の時間帯や連絡への返信の目安など、社内でのやり取りのルールを決めておくと、連携が取りにくくなるのを防げます。

清算期間の途中で、働いた時間を確認できるようにする

フレックスタイム制では、清算期間の最後になって、総労働時間に足りない、あるいは総枠を大きく超えていたと気づいても、残りの日数では調整しきれないことがあります。

従業員と管理者の両方が、清算期間の途中でその時点までの労働時間を確認できるようにしておくと、足りない分を早めに埋めたり、働きすぎを抑えたりする調整がしやすくなります。

日々の出退勤を打刻で正確に記録しておくことが、フレックスタイム制のメリットを活かす前提になります。

総枠を超えた分の残業代は必ず払う

フレックスタイム制は1日単位で時間外労働を判定しないため、残業代がかからない制度だと誤解されることがあります。

しかし、清算期間の労働時間の合計が総枠を超えた部分は時間外労働であり、割増賃金の支払いが必要です。

超えた時間を翌月に繰り越して相殺することは、賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に反するため認められていません。

深夜労働や法定休日の労働の割増賃金も、固定時間制と同じく必要です。

このように、フレックスタイム制のメリットを活かすには、コアタイムの決め方、清算期間の途中での労働時間の確認、総枠を超えた時間外労働の正しい支払いの3つを押さえておくことが大切です。

次は、フレックスタイム制のメリットを勤怠管理で活かせる勤怠クラウドを紹介します。

フレックスタイム制のメリットを勤怠管理で活かすなら勤怠クラウド

フレックスタイム制のメリットを勤怠管理で活かすなら、総枠を超えた時間外労働と所定総労働時間に足りない時間を自動で集計し、固定時間制の部署とも同じシステムで管理できる勤怠クラウドがおすすめです。

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勤怠クラウドでは、従業員のグループごとに勤務形態をフレックスタイム制に設定し、所定総労働時間を入力できます。

時間外労働は、清算期間の労働時間の合計が法定労働時間の総枠(40時間×暦日数÷7)を超えた分として集計され、日ごとの8時間超では判定しません。

所定総労働時間に足りない時間は「フレックス不足」として別に集計されるため、不足時間の控除や繰越の判断に必要な時間数をすぐに確認できます。

フレックスタイム制のグループは予定時刻を持たないため、遅刻や早退の判定の対象にもなりません。

深夜労働(22時〜翌5時)、法定休日の労働、月60時間を超える時間外労働もそれぞれ別枠で集計され、CSV・Excel・PDFで出力できます。

グループごとに、ほかの労働時間制と並べて使える

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集計結果には従業員ごとの労働時間制も出力されるため、制度が混在していても給与計算の担当者が取り違えずに済みます。

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