フレックスタイム制で給料が減るのはなぜ?仕組みと違法なケース

フレックスタイム

勤務時間を自分で決められるようになって通勤も楽になったのに、給与明細を見て首をかしげる人がいます。

フレックスタイム制に切り替わってから、以前と同じように働いているのに給料が減ったと感じる人は少なくありません。

会社に理由を聞いても説明があいまいで、計算が正しいのかどうかを自分で確かめる手立てが分からないという声もあります。

フレックスタイム制で給料が減るときに何が起きているのかを、具体的な試算と法律のルールに沿ってひもといていきます。

フレックスタイム制で給料が減るのはなぜ?

フレックスタイム制で給料が減る主な理由は、残業を清算期間の労働時間の合計で判定するため日々の残業が月単位で相殺されることと、総労働時間に足りない時間が控除されることの2つで、どちらもルールどおりに計算されていれば違法ではありません。

給料が減ったと感じたときは、まず実際に給料が減っているのか、残業代のつき方が変わっただけなのかを分けて考える必要があります。

実際に減るケースと減ったように見えるケース

フレックスタイム制で給料が減ったと感じる主なケースは、以下の通りです。

ケース 内容 違法かどうか
残業代が減った 日々の8時間超が月の合計で相殺され、割増の対象になる時間が減った ルールどおりなら違法ではない
不足時間を控除された 清算期間の労働時間が総労働時間に足りず、その分の賃金を差し引かれた ルールどおりなら違法ではない
総枠を超えた分が払われていない 法定労働時間の総枠を超えた時間外労働の割増賃金が支払われていない 違法
遅刻や有給休暇を理由に減らされた コアタイムへの遅れや有給休暇の取得を理由に賃金を差し引かれた 違法になる可能性が高い

最初の2つは制度の仕組みによるもので、残りの2つは会社の計算や運用に問題があるケースです。

固定時間制との残業の判定の違い

固定時間制では、1日8時間を超えた時間や、週40時間を超えた時間が、その都度時間外労働になります。

これに対してフレックスタイム制では、1日に何時間働いても、その日だけで時間外労働になることはありません。

時間外労働になるのは、清算期間の実際の労働時間の合計が、法定労働時間の総枠(40時間×清算期間の暦日数÷7)を超えた部分だけです。

清算期間が1か月の場合の総枠は、暦日数が31日の月で177.1時間、30日の月で171.4時間、29日の月で165.7時間、28日の月で160.0時間です。

このように、フレックスタイム制で給料が減る主な理由は、残業を清算期間の労働時間の合計で判定するため日々の残業が月単位で相殺されることと、総労働時間に足りない時間が控除されることの2つで、どちらもルールどおりに計算されていれば違法ではありません。

次は、残業代が減る仕組みを試算とあわせて確認します。

フレックスタイム制で残業代が減る仕組みと試算

フレックスタイム制で残業代が減るのは、長く働いた日と短く働いた日が月の合計で相殺されるうえ、所定総労働時間から法定労働時間の総枠までの時間には割増がつかないためで、同じ働き方でも固定時間制より残業代が少なくなることがあります。

ただし、働き方によってはフレックスタイム制の方が給料が多くなる場合もあり、必ず減るわけではありません。

日々の8時間超が月単位で相殺される

固定時間制では、ある日に9時間働き、別の日に7時間で帰った場合、9時間働いた日の1時間は時間外労働として割増賃金の対象になります。

フレックスタイム制では、9時間の日と7時間の日が月の合計の中で相殺されるため、月の合計が総枠を超えなければ、割増賃金はつきません。

日によって忙しさに差がある人ほど、この相殺によって残業代が少なくなります。

所定総労働時間と法定労働時間の総枠の間の時間

労使協定で定める所定総労働時間は、法定労働時間の総枠より短く設定されていることが一般的です。

たとえば、暦日数30日の月で、所定総労働時間を160時間(8時間×20日)としている会社であれば、160時間から171.4時間までの約11.4時間は、所定は超えているものの法定の総枠は超えていない時間になります。

この時間は、法定の時間外労働ではないため25%の割増は不要ですが、所定総労働時間を超えて働いた時間として、その時間分の賃金は支払う必要があります。

固定時間制で毎日1時間ずつ残業していた人がフレックスタイム制に移ると、この部分が割増なしの扱いになるため、残業代が減ったように感じやすくなります。

固定時間制とフレックスタイム制の残業代の比較

時給換算2,000円、暦日数30日の月に20日出勤し、所定労働時間は1日8時間(所定総労働時間160時間)として、2つの働き方で比べると以下のようになります。

1つ目は、毎日9時間働いた場合(合計180時間)です。

項目 固定時間制 フレックスタイム制
割増ありの時間外労働 20時間(毎日1時間) 約8.6時間(180時間−171.4時間)
割増なしの所定外労働 0時間 約11.4時間(171.4時間−160時間)
残業代の合計 50,000円 約44,300円

働いた時間は同じでも、フレックスタイム制では割増の対象になる時間が減るため、残業代は約5,700円少なくなります。

2つ目は、9時間の日が10日、7時間の日が10日あった場合(合計160時間)です。

項目 固定時間制 フレックスタイム制
時間外労働の賃金 25,000円(10時間×2,500円) 0円
早退による控除 −20,000円(10時間×2,000円) 0円
差し引き +5,000円 0円

固定時間制では、7時間で帰った日は早退として扱われ、就業規則によってはその時間分が控除されます。

フレックスタイム制では、月の合計が所定総労働時間を満たしていれば、早退という扱いはなく控除もされません。

このケースでは、固定時間制の方が5,000円多くなりますが、固定時間制では早退の控除や遅刻の扱いを気にせずに働く時間を調整することはできません。

このように、フレックスタイム制で残業代が減るのは、長く働いた日と短く働いた日が月の合計で相殺されるうえ、所定総労働時間から法定労働時間の総枠までの時間には割増がつかないためで、同じ働き方でも固定時間制より残業代が少なくなることがあります。

次は、不足時間で給料が減る仕組みを確認します。

フレックスタイム制の不足時間で給料が減る仕組み

フレックスタイム制では、清算期間の実際の労働時間が所定総労働時間に足りなかった場合、不足した時間分の賃金を控除するか、不足時間を翌月の総労働時間に繰り越すかのどちらかで処理され、控除の場合はその月の給料が減ります。

不足時間による減額は、フレックスタイム制で実際に給料が減る代表的なケースです。

不足時間の賃金控除

清算期間の労働時間が所定総労働時間に足りなかった場合、会社は不足した時間分の賃金を差し引いて支払うことができます。

たとえば、所定総労働時間が160時間の月に150時間しか働かなかった場合、時給換算2,000円であれば、不足した10時間分の20,000円が控除されます。

翌月への繰越と、その上限

会社によっては、不足した時間を控除せずに、翌月の総労働時間に加えて繰り越す扱いにしていることもあります。

繰り越す場合、その月は賃金を全額支払い、翌月は所定総労働時間に不足分を加えた時間を働くことになります。

ただし、繰り越した後の翌月の総労働時間は、法定労働時間の総枠の範囲内に収まっていなければなりません。

控除と繰越のどちらで処理するかは、会社が賃金規程などで定めている内容によって決まります。

不足時間を避ける方法

不足時間による減額は、清算期間の終わりに気づいても取り戻す時間がありません。

月の途中で、その時点までの労働時間の合計と、残りの日数で働く必要がある時間を確認しておくことで、不足を避けることができます。

勤怠管理システムで自分の労働時間をいつでも確認できる職場であれば、月の半ばの時点で不足しそうかどうかを判断できます。

このように、フレックスタイム制では、清算期間の実際の労働時間が所定総労働時間に足りなかった場合、不足した時間分の賃金を控除するか、不足時間を翌月の総労働時間に繰り越すかのどちらかで処理され、控除の場合はその月の給料が減ります。

次は、フレックスタイム制で給料が減っても違法にならないケースを確認します。

フレックスタイム制で給料が減っても違法にならないケース

フレックスタイム制で給料が減っても違法にならないのは、清算期間の労働時間が法定労働時間の総枠の範囲内で割増がつかない場合と、所定総労働時間に足りない時間をルールどおりに控除した場合です。

どちらも制度の仕組みどおりの結果であり、会社が不当に賃金を減らしているわけではありません。

総枠内の労働で割増がつかない

清算期間の労働時間の合計が法定労働時間の総枠を超えていなければ、1日に何時間働いた日があっても、25%の割増賃金は発生しません。

固定時間制のときより残業代が減っていても、総枠を超えた時間の割増賃金がきちんと支払われていれば、違法ではありません。

総労働時間に足りない分の控除

所定総労働時間に足りない時間の賃金を控除することも、フレックスタイム制のルールとして認められています。

ただし、控除できるのは実際に不足した時間分だけで、それを超えて差し引くことはできません。

このように、フレックスタイム制で給料が減っても違法にならないのは、清算期間の労働時間が法定労働時間の総枠の範囲内で割増がつかない場合と、所定総労働時間に足りない時間をルールどおりに控除した場合です。

次は、フレックスタイム制で給料が減ると違法になるケースを確認します。

フレックスタイム制で給料が減ると違法になるケース

フレックスタイム制で給料が減ると違法になるのは、総枠を超えた時間外労働の割増賃金を払わない場合、超過した時間を翌月に繰り越して相殺する場合、遅刻や早退を理由に控除する場合、有給休暇の日を労働時間として扱わない場合、深夜や法定休日の割増を払わない場合です。

これらはいずれも、フレックスタイム制のルールを誤って運用している状態で、未払い賃金として後から請求される可能性があります。

総枠を超えた時間外労働の割増賃金を払わない

清算期間の労働時間の合計が法定労働時間の総枠を超えた場合、超えた時間には25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

月60時間を超える時間外労働には、50%以上の割増賃金が必要です。

フレックスタイム制だから残業代は出ない、という運用は誤りです。

超過時間を翌月に繰り越して相殺する

総労働時間を超えて働いた時間を翌月に繰り越し、翌月の不足分と相殺する扱いは認められていません。

超過した時間の賃金がその月の賃金支払日に支払われないことになり、賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に反するためです。

不足時間の繰越は認められていても、超過時間の繰越は認められないという違いに注意が必要です。

遅刻・早退を理由に控除する

フレックスタイム制では、始業と終業の時刻を従業員が決めるため、固定時間制のような遅刻や早退の考え方がありません。

コアタイムに遅れた場合でも、清算期間の総労働時間を満たしていれば、遅れた時間分の賃金を差し引くことはできません。

有給休暇の日を労働時間として扱わない

フレックスタイム制で有給休暇を取得した日は、労使協定で定めた「標準となる1日の労働時間」を働いたものとして扱い、その分の賃金を支払う必要があります。

有給休暇を取得した日を労働時間に含めずに不足時間として控除すれば、有給休暇の賃金を支払っていないことになります。

なお、清算期間の終わりに生じた不足時間を、後から有給休暇で埋めて相殺することは認められていません。

深夜・法定休日の割増を払わない

フレックスタイム制であっても、22時から翌5時までの深夜労働には25%以上、法定休日の労働には35%以上の割増賃金が必要です。

これらは清算期間の総枠とは関係なく発生するため、総枠を超えていない月でも支払わなければなりません。

このように、フレックスタイム制で給料が減ると違法になるのは、総枠を超えた時間外労働の割増賃金を払わない場合、超過した時間を翌月に繰り越して相殺する場合、遅刻や早退を理由に控除する場合、有給休暇の日を労働時間として扱わない場合、深夜や法定休日の割増を払わない場合です。

次は、給料の減り方を確認するためにできることを確認します。

フレックスタイム制で給料の減り方を確認するためにできること

フレックスタイム制で給料の減り方を確認するには、従業員は清算期間の途中で自分の労働時間と給与明細を確認し、会社は不足時間の控除と繰越の扱いや所定外労働の賃金を賃金規程と労使協定で明確にしておくことが大切です。

給料が減った理由が分からないままにしておくと、従業員の不満や、会社への不信につながります。

従業員:清算期間の途中で労働時間を確認する

従業員は、清算期間の途中で自分の労働時間の合計を確認し、所定総労働時間に足りそうか、法定の総枠を超えそうかを把握しておきましょう。

給与明細では、時間外労働の時間数、不足時間の控除の有無、深夜や休日の時間数を確認し、自分の勤怠の記録と合っているかを見ておくと、計算の誤りに気づけます。

減り方に納得できない場合は、まず人事や給与の担当者に計算の内訳を確認し、それでも解決しない場合は、労働基準監督署などに相談する方法もあります。

会社:賃金規程と労使協定で控除・繰越の扱いを定める

会社は、不足時間を控除するのか翌月に繰り越すのか、所定総労働時間を超えて法定の総枠までの時間の賃金をどう支払うのかを、賃金規程と労使協定で明確に定めておく必要があります。

制度を導入するときには、固定時間制からの変更で残業代のつき方がどう変わるのかを従業員に説明しておくと、給料が減ったという不満を防ぎやすくなります。

従業員ごとの時間外労働と不足時間を、勤怠管理システムで正確に集計しておくことも、計算の誤りによる未払いや過払いを防ぐうえで欠かせません。

このように、フレックスタイム制で給料の減り方を確認するには、従業員は清算期間の途中で自分の労働時間と給与明細を確認し、会社は不足時間の控除と繰越の扱いや所定外労働の賃金を賃金規程と労使協定で明確にしておくことが大切です。

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