フレックスタイム制の時間外労働とは?計算方法と上限規制について

フレックスタイム

始業と終業の時刻を従業員に任せると、日によって10時間働いたり6時間で帰ったりと、勤務の長さに差が出ます。

そのため、フレックスタイム制ではどの時点から時間外労働として扱えばよいのか、判断に迷う担当者は少なくありません。

36協定の結び方や、年720時間などの上限との関係も、固定時間制と同じ考え方でよいのかが気になるところです。

数え方を誤ると、未払いや法令違反にもつながりかねません。

フレックスタイム制のもとでの時間外労働について、計算の手順から36協定、上限規制まで順に確かめていきます。

フレックスタイム制の時間外労働とは?

フレックスタイム制の時間外労働とは、清算期間の実際の労働時間が法定労働時間の総枠を超えた時間のことで、1日8時間や1週40時間を超えたかどうかでは判定しません。

法定労働時間の総枠を超えた時間が、時間外労働になる

フレックスタイム制では、清算期間を平均して1週40時間以内であれば、日ごとや週ごとの労働時間が長くても法定労働時間を超えたことにはなりません(労働基準法第32条の3)。

清算期間を平均して1週40時間となる時間数を法定労働時間の総枠といい、清算期間の実際の労働時間がこれを超えた部分が時間外労働です。

法定労働時間の総枠は、40時間×清算期間の暦日数÷7で求めます。

清算期間1か月の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

総枠の計算や特例については、フレックスタイム制の法定労働時間の記事で詳しく解説しています。

法定内残業との違い

清算期間の総労働時間として会社が定めた所定の時間を超えても、法定労働時間の総枠に収まっている時間は、時間外労働ではなく法定内残業です。

法定内残業には法律上の割増賃金は不要で、所定を超えた時間の賃金をどう支払うかは賃金規程の定めによります。

区分 範囲 割増賃金
所定内 所定の総労働時間まで 不要
法定内残業 所定を超えて法定労働時間の総枠まで 不要(賃金規程による)
時間外労働 法定労働時間の総枠を超えた部分 25%以上

1日や1週では判定しない

フレックスタイム制では、1日に10時間働いた日があっても、その日の8時間を超えた2時間が時間外労働になることはありません。

コアタイムを設けている場合も、コアタイムの前後に長く働いたことだけで時間外労働になるわけではなく、判定はあくまで清算期間の合計で行います。

このように、フレックスタイム制の時間外労働とは、清算期間の実際の労働時間が法定労働時間の総枠を超えた時間のことで、1日8時間や1週40時間を超えたかどうかでは判定しません。

次は、フレックスタイム制の時間外労働の計算方法を解説します。

フレックスタイム制の時間外労働の計算方法

フレックスタイム制の時間外労働は、清算期間1か月なら実際の労働時間から総枠を差し引いて求め、清算期間が1か月を超える場合は月ごとの週平均50時間超と清算期間全体の総枠超の2段階で求めます。

清算期間1か月の計算手順と計算例

清算期間が1か月の場合は、以下の手順で時間外労働を求めます。

  1. その月の実際の労働時間を合計する(法定休日に働いた時間は除く)
  2. その月の暦日数から法定労働時間の総枠を求める
  3. 実際の労働時間から総枠を差し引いた時間を時間外労働とする

30日の月に、所定の総労働時間を160時間とし、実際に195時間働いた場合の例は、以下の通りです。

項目 時間
実際の労働時間 195時間
法定労働時間の総枠(30日) 171.4時間
時間外労働(195時間−171.4時間) 23.6時間
法定内残業(171.4時間−160時間) 11.4時間

この例では、23.6時間に25%以上の割増賃金が必要で、11.4時間は賃金規程の定めに従って支払います。

清算期間1か月超の計算

清算期間が1か月を超える場合は、まず各月の労働時間が週平均50時間(50時間×その月の暦日数÷7)を超えた部分を、その月の時間外労働として計算します。

そのうえで、清算期間の最後の月に、清算期間全体の労働時間から各月の時間外労働を差し引き、残りが清算期間全体の総枠を超えた部分を、最後の月の時間外労働として計算します。

各月の時間外労働は、その月の賃金で割増賃金を支払う必要があり、清算期間の終わりまでまとめて持ち越すことはできません。

割増率

フレックスタイム制でも、割増率は通常の労働時間制と同じです(労働基準法第37条)。

区分 割増率
時間外労働 25%以上
時間外労働のうち月60時間を超えた部分 50%以上
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上
時間外労働かつ深夜労働 50%以上
月60時間を超えた時間外労働かつ深夜労働 75%以上
法定休日の労働 35%以上
法定休日の労働かつ深夜労働 60%以上

月60時間を超えた部分の50%は、2023年4月から中小企業にも適用されています。

このように、フレックスタイム制の時間外労働は、清算期間1か月なら実際の労働時間から総枠を差し引いて求め、清算期間が1か月を超える場合は月ごとの週平均50時間超と清算期間全体の総枠超の2段階で求めます。

次は、フレックスタイム制の時間外労働と36協定の関係を解説します。

フレックスタイム制の時間外労働と36協定

フレックスタイム制でも、法定労働時間の総枠を超えて時間外労働をさせるには36協定の締結と届出が必要ですが、1日の延長時間は協定せず、1か月と1年について協定します。

総枠を超えて働かせるには、36協定が必要

フレックスタイム制の労使協定を結んでいても、それだけで時間外労働をさせることはできません。

法定労働時間の総枠を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合は、固定時間制と同じく36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36条)。

36協定を届け出ずに総枠を超えて働かせた場合は、それだけで法令違反になります。

1日の延長時間は協定しなくてよい

フレックスタイム制では日々の労働時間を従業員が決めるため、36協定で1日について延長できる時間を協定する必要はありません。

協定するのは、1か月と1年について延長できる時間で、清算期間を通算して時間外労働をさせることができる時間を定めれば足ります。

清算期間1か月超の場合の注意点

清算期間が1か月を超える場合でも、36協定の延長時間は1か月と1年について定めます。

このとき、各月の時間外労働として数えるのは、その月の週平均50時間を超えた時間と、清算期間の最後の月の総枠を超えた時間です。

最後の月に清算期間全体の総枠超過がまとめて加わるため、最後の月だけ時間外労働が大きくなり、36協定の1か月の延長時間を超えないかに注意が必要です。

このように、フレックスタイム制でも、法定労働時間の総枠を超えて時間外労働をさせるには36協定の締結と届出が必要ですが、1日の延長時間は協定せず、1か月と1年について協定します。

次は、フレックスタイム制の時間外労働の上限規制を解説します。

フレックスタイム制の時間外労働の上限規制

フレックスタイム制の時間外労働にも、原則として月45時間・年360時間、特別条項を設けても年720時間・月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内という上限規制が、通常の労働時間制と同じく適用されます。

原則は月45時間・年360時間

36協定で定められる時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です(労働基準法第36条第4項)。

フレックスタイム制では、清算期間1か月の場合、その月の総枠を超えた時間がこの上限の対象になります。

特別条項を設けた場合の上限

臨時的な特別の事情がある場合に特別条項を設けても、以下の上限を超えることはできません(労働基準法第36条第5項・第6項)。

項目 上限 対象
年間 720時間以内 時間外労働
単月 100時間未満 時間外労働と休日労働の合計
2〜6か月の平均 いずれも80時間以内 時間外労働と休日労働の合計
月45時間を超える回数 年6回まで 時間外労働

単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は、特別条項を使わない月も含めて常に守る必要があり、法定休日の労働も含めて判定します。

清算期間1か月超の場合は、月ごとの時間外労働で判定する

清算期間が1か月を超える場合は、各月の時間外労働、つまり週平均50時間を超えた時間と、最後の月に加わる総枠超過の時間で上限規制を判定します。

清算期間の最後の月は、総枠超過の時間がまとめて加わるため、月45時間や単月100時間未満を超えやすくなります。

清算期間の途中で各月の労働時間を確認し、最後の月に時間外労働が集中しないよう調整しておく必要があります。

違反した場合の罰則

上限規制に違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法第119条)。

このように、フレックスタイム制の時間外労働にも、原則として月45時間・年360時間、特別条項を設けても年720時間・月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内という上限規制が、通常の労働時間制と同じく適用されます。

次は、フレックスタイム制で時間外労働が違法になるケースを解説します。

フレックスタイム制で時間外労働が違法になるケース

フレックスタイム制で時間外労働が違法になるのは、総枠を超えた分の割増賃金を払わない場合、超えた時間を翌月に繰り越す場合、36協定がないか上限を超えている場合、長時間労働を把握していない場合です。

総枠を超えた分の割増賃金を払わない

フレックスタイム制だから残業代はかからないと誤解し、総枠を超えた時間に割増賃金を払わないのは、労働基準法第37条違反です。

割増賃金の未払いは、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となるほか、従業員から過去3年分の未払い分を請求される可能性があります。

超えた時間を翌月に繰り越して相殺する

総枠を超えて働いた時間を翌月に繰り越し、翌月の労働時間を減らして相殺することは認められません。

その月に働いた時間の賃金は、その月の賃金として全額を支払う必要があり、繰り越しは賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に反します。

36協定がない、または上限を超えている

36協定を結ばずに総枠を超えて働かせた場合や、36協定で定めた時間、上限規制の時間を超えて働かせた場合は、労働基準法第32条や第36条の違反になります。

フレックスタイム制では、始業と終業の時刻を従業員が決めるため、会社が気づかないうちに上限に近づいていることがあります。

長時間労働を把握していない

会社は、フレックスタイム制の従業員についても、タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な方法で、労働時間の状況を把握しなければなりません(労働安全衛生法第66条の8の3)。

休憩時間を除いて1週40時間を超えて働いた時間が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合は、医師による面接指導を行う必要があります(労働安全衛生法第66条の8)。

出退勤を従業員に任せていても、労働時間を把握する責任は会社にあります。

このように、フレックスタイム制で時間外労働が違法になるのは、総枠を超えた分の割増賃金を払わない場合、超えた時間を翌月に繰り越す場合、36協定がないか上限を超えている場合、長時間労働を把握していない場合です。

次は、フレックスタイム制の時間外労働を自動で集計できる勤怠クラウドを紹介します。

フレックスタイム制の時間外労働を自動で集計するなら勤怠クラウド

フレックスタイム制の時間外労働を自動で集計するなら、法定労働時間の総枠を超えた時間を集計し、月60時間超・深夜・法定休日も区分して、しきい値を超えた従業員を一覧で確認できる勤怠クラウドがおすすめです。

勤怠クラウドは、中小企業向けの定額制の勤怠管理システムで、清算期間1か月のフレックスタイム制に対応しています。

総枠を超えた時間外労働を自動で集計

勤怠クラウドでは、従業員のグループごとに勤務形態をフレックスタイム制に設定できます。

時間外労働は、その月の労働時間の合計が法定労働時間の総枠(40時間×暦日数÷7)を超えた分として集計され、日ごとの8時間超や週ごとの40時間超では判定しません。

所定総労働時間を入力しておけば、所定に足りない時間も「フレックス不足」として別に集計されます。

月60時間超・深夜・法定休日を区分して出力

時間外労働のうち月60時間を超えた部分、22時から翌5時までの深夜労働、法定休日に働いた時間は、それぞれ別枠で集計されます。

法定休日の曜日を設定しておくと、法定休日に働いた時間は時間外労働とは別に集計されます。

集計結果は、従業員ごとに労働時間制・出勤日数・実働時間・時間外・うち月60時間超・深夜・法定休日・フレックス不足の列で、CSV・Excel・PDFに出力できます。

月の時間外がしきい値を超えると「残業超過」と表示

会社設定で月間の残業アラートのしきい値を時間で設定しておくと、月の時間外労働がその時間を超えた従業員は、勤怠データの一覧に「残業超過」と表示されます。

フレックスタイム制の従業員も、総枠を超えた時間外労働をもとに判定されるため、36協定の月の延長時間に近い値をしきい値にしておけば、超えそうな従業員を一覧で確認できます。

定額制・30日間無料

勤怠クラウドは、従業員数の上限ごとに月額を固定した定額制で、機能ごとのオプション料金はありません。

プラン 従業員数 月額(税込)
ライト 50名まで 4,950円
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